農に向き合う~農業経営部会会員紹介「帯広・まつもと薬局」
1.「くすり」「栄養」「運動」で健康サポート
1983年、松本健春社長が旧協会病院のそばで開業。現在は帯広市内を中心に薬局を5店舗展開する。薬局内では健康食品のコーナーも設け、オリジナル商品の開発、販売にも力を入れる。2017年には同市内に機能訓練特化型デイサービス「ネオリハ」を開設。「くすり」「栄養」「運動」の切り口から利用者の健康をサポートする。
オリジナル商品の果実酢「幸福de酢」は、地元の果樹園で無農薬で栽培したラズベリー、ブルーベリー、梅が原料。一つずつ手摘みで収穫した果実を約1カ月間発酵させて製造した。開発は同社の薬剤師、栄養士の声を基にした。松本社長は「薬局が作る健康食品として他とは違う信頼感を持ってもらえる」と話し、新たに腎臓病の患者向けに低たんぱく質のパン粉開発も進めている。
2.健康増進も「まちづくり」の一つ
薬局は処方箋調剤のウエイトが大きいが、松本社長は「健康という切り口の中でもっと何かを還元していかなければならない」と考える。20年ほど前に当時の薬局としては珍しい管理栄養士を採用したのはその表れの一つ。住民向けに医療講演会や健康教室、食育事業を主催したり、他団体の活動に講師として派遣したりと地域貢献活動に力を入れる。ネオリハでは、通い始めてから要介護度が下がった利用者もいる。松本社長は「健康づくりもまちづくりの一つ。医療費削減に薬局として貢献したい」と話す。
3.同友会のつながりで商品開発
農業経営部会の親組織になる同友会とかち支部の支部長を16年から務めている。食のつながりがあって農業経営部会にも所属するが、会員たちの意欲的な姿勢には「一歩前に踏み出す何かやろうという行動力は素晴らしい」と感心させられるという。
同社が健康食品の開発に着手したときは農業経営部会の人脈やアドバイスが役に立った。果実酢の原料を調達する「ときいろファーム」も同部会の会員だ。「『こんなものがあればいいな』という発想が形になった。同友会のつながりがあったからこそ日の目を見た」と振り返る。
4.地域の「健康ステーション」に
松本社長は、鹿追町内で畑作と酪農を営む農家の長男だったが、後は継がずに薬業の道に進んだ。「だから農業には愛着がある。自分ができなかったので頑張ってほしい」と特別な思いで農家や農業にエールを送る。
少子高齢化の進展や医療費の増大が課題になる中、病気も介護も「予防」が重要になっている。目指すのは、処方箋がなくても酢を買いに薬局を訪れて栄養士に相談できるような地域の「健康ステーション」。松本社長は「地域のために薬局にできることはまだまだある」と語る。
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