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「シャクシャインは十勝生まれ」 日高の伝承ツアーで明かす 道アイヌ協会大川理事長

イヌンペ(いろり)を囲んで行われた懇談会

山脈越えた縁 交流に意欲
 【日高管内新ひだか】江戸時代に松前藩と戦ったシャクシャインは十勝の生まれ-。4日、十勝と日高をつなぐ古代の道を探るツアーに参加した十勝の人々の前で北海道アイヌ協会の大川勝理事長(74)=新ひだか町=が、日高で語り継がれている事実を明らかにした。「アイヌ民族の英雄が十勝出身者だったとは…」と参加者にうれしいサプライズが広がった。

 ツアーは、日高山脈の国立公園化を前に、古くから伝えられている戸蔦別川(帯広市)上流のエサオマントッタベツ(アイヌ語で「浜に向かう箱様の川」の意)岳(1902メートル)を越えて新ひだか町静内の農屋(のや)地区に至る道を現地で確認しようと、帯広市拓成町の十勝幌尻農場(山口富嗣代表)が企画した。公募に応じ47人が参加、2台の大型バスに分乗し、シャクシャイン像やアイヌと親交があった探検家松浦武四郎の記念碑がある同町の真歌(まうた)公園を訪れた。

シャクシャインが十勝出身だと説明する北海道アイヌ協会の大川理事長

 現地ではアイヌの正装をした大川理事長や大野克之町長(62)らが出迎え、公園内のシャクシャイン記念館でイヌンペ(いろり)を囲んで懇談会が開かれた。大川理事長は「十勝の皆さんを心から歓迎したい。シャクシャインは十勝から来たと伝えられており、ずっと昔から静内と帯広は行き来があった。エサオマントッタベツの頂上付近にはそれを示す古い石垣もある。これからも行き来を深めたい」と歓迎のあいさつ。

 シャクシャインの解説に立った新ひだかアイヌ協会の菅原勝吉民族文化専門員(52)は「帯広の拓成町と農屋を結ぶ道はシャクシャインロードと呼ばれている。この道筋の川や沢の名付け方は十勝と共通しており相当古くから人が行き来したことを示している」と語った。

 ツアーに参加したJA帯広かわにしの有塚利宣組合長(88)は「北海道の農業はアイヌの導きがなければ成り立たなかった。農業者はみんな感謝している。十勝と日高は山脈を挟んで背中合わせだが、シャクシャインロードを、交流をさらに深める道にするよう真剣に取り組みたい」と期待と決意を述べた。帯広から参加した女性(67)も「シャクシャインが十勝生まれとは、本当に驚いた。深いつながりを知ることができた」とアイヌ協会の説明に感激していた。

 主催した山口代表は「昔からの言い伝えを十勝の人に聞いてもらえて本当によかった。日高山脈の歴史を理解し、正しく伝えるためにもこの山越えルートの本格的な整備を国などに働き掛けたい」と話した。
(元十勝毎日新聞記者・夏川憲彦)

真歌公園のシャクシャイン像(新ひだかアイヌ協会提供)

<シャクシャイン>
 日高管内新ひだか町のアイヌ民族の長。松前藩の圧政に対して立ち上がり、道内各地のアイヌを統率して1669年、シャクシャインの戦いを起こすが、松前藩との和睦交渉の席で謀殺された。

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