手作り“機関車”お庭で出発進行 鹿追の松本さん
【鹿追】町内の獣医師松本彰さん(68)=緑町=が自宅の庭にレールを敷き、旧国鉄のディーゼル機関車の形を再現した手製のミニチュア電車を運行させて地域の話題になっている。若い頃から鉄道ファンだった松本さんが、長い時間をかけて夢を実現させた。1周100メートル。季節の花々の中を走る電車に子どもたちがまたがり、歓声を響かせている。
「勉強を頑張ったら、きょうはおじさんが鉄道に乗せてくれる!」。松本さんの妻で、自宅で学習塾を営む梅子さん(66)のもとへ子どもたちが楽しそうに通って来る。運転席に座った松本さんが、塾を終えた子どもを乗せて準備万端。電車が動きだすと、梅子さんは「いってらっしゃい」と手を振った。
電車はモーター2台を搭載し、運転席と貨車で大人2人、子ども3人までけん引できる。ボタンやチューリップ、スイセン、ツツジなど、季節ごとに咲く花々の中を運行。へメロカリスやユリ、シャクヤクも間もなく見頃だ。
電車は松本さんがかつて憧れた「国鉄DD20形ディーゼル機関車」の形を再現。原寸を、5インチ(127ミリ)に縮小したレール幅に合わせて縮めた。方眼紙に自ら図面を引き、ベニヤ板で車体を製作。スピーカー廃材や針金などを使ってペンキで塗装し、前照灯にはペンライトを施した。録音した国鉄時代のディーゼル音も聞くことができる。
電動工具を使って手作りした線路のポイント(分岐器)や交差するカーブ、ターンテーブル(転車台)も見どころ。枕木を敷いたレールは下に砂利を入れて水平を保っている。「揺れると乗り心地が悪いから」(松本さん)とメンテナンスも怠らない。
時刻表を見たり、鉄道での旅行が趣味だった松本さんは、学生時代からHOゲージやNゲージの鉄道模型を作り始めた。「いつかは自分の電車を外で走らせたい」と思うようになり、10年ほど前から一人で庭の鉄道造りに着手、仕事の合間を見ながらコツコツと規模を拡大してきた。
毎年、初雪の11月ごろに片付け、孫が帰省する5月の大型連休に合わせてレールを敷き直す。松本さんは「営業係数ゼロの赤字路線だけど、子どもの笑顔はうれしい。いつか石炭で走る汽車も走らせてみたい」と夢も広げている。(小寺泰介)