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採卵成績予測による黒毛和種受精卵ドナー牛選定技術

道総研畜産試験場 基盤研究部 生物工学グループ

1.試験のねらい
 黒毛和種牛受精卵ドナー牛の血中ホルモン濃度および遺伝的多型を利用し、採卵成績を予測するための技術を開発する。

2.試験の方法
1 )血中AMH 濃度(AMH 濃度)の判定基準(AMH レベル)を設定し、農場で利用可能なAMH 測定手法を示す。採卵成績を出生後早期に予測するために、黒毛和種育成牛の成長に伴うAMH 濃度の変化を明らかにする。
2 )黒毛和種牛におけるGRIA1遺伝子型(GRIA1型)と系統および採卵成績との関係を解析し、GRIA1型単独またはAMH 濃度との組み合わせによるドナー牛選定技術を示す。
3)AMH レベルとGRIA1型によるドナー牛の選定を実施し、有用性を確認する。

3.成果の概要
1 )ドナー牛のAMH 濃度を第一四分位(0.118ng/ml)および第三四分位(0.488 ng/ml)を基準にL、M、Hの3段階のAMH レベルに分類した結果、回収卵数、受精卵数および正常卵数はAMH レベルが高いほど有意に多かった(表1)。育成牛のAMH 濃度は成長に伴う変動が大きく、値の安定する10ヶ月齢以降に測定すべきであると考えられた。「かんたん遠心機」による血漿分離はAMH 濃度測定結果に影響せず、臨床検査センターを利用してAMH 濃度の測定が可能であった。これらから、農場で採取した血液からAMH 濃度を測定し、採卵成績の予測が可能であることが示された。
2 )GRIA1型ごとの平均回収卵数、受精卵数、正常卵数はいずれもGG 型がAG 型に比べ有意に多かった(表2)。気高系はGG 型が56%と多く、AA 型は3%と少なかった。藤良系はGG 型が54%、AA 型13%であり、田尻系はGG 型が16%、AA 型が15%であった(図1)。これらから、特に田尻系および藤良系は、GG 型をドナー牛として選定することにより、採卵成績の向上が期待できると考えられた。さらにAMH レベルとGRIA1型を組み合わせることによって、採卵成績の予測精度が向上すると考えられた。
3 )父母が同じである全きょうだいであってもAMH レベルやGRIA1型に違いが認められ、全きょうだい内からドナー牛を選定する際の指標のひとつとして活用可能だった(表2)。
4 )以上の成果をもとに、生産現場においてAMH 濃度とGRIA1型を指標に受精卵の生産性の高いドナー牛を選定するためのマニュアルを作成した。

4.留意点
1 )受精卵移植を黒毛和種牛群の改良に活用している農場、機関等が、採卵成績向上を目的に受精卵ドナー牛を選定する場合に活用する。
2)本技術は過剰排卵処理後の採卵性を予測するものであり、採卵数を保証するものではない。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 生物工学グループ 森安  悟
電話(0156)64-0618  FAX(0156)64-6151
E-mail:moriyasu-satoru@hro.or.jp

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