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絆が紡いだプロの夢 ドラフト2位 江陵高・古谷投手

巣立ちを前に心安らぐひとときを過ごす古谷投手とみりあさん(中央)、輝紀さん(左)、理江さん(奥)、翔真さん(右)=23日、幕別町内の自宅で(金野和彦撮影)

 【幕別】プロ野球の新人選手選択会議(ドラフト会議)で福岡ソフトバンクホークスから2位指名を受けた江陵高校3年・古谷優人投手(17)のこれまでの歩みは、家族や地域に大きく支えられてきた。両親をはじめ、昨年亡くなった野球好きの祖父、脳の障害があってもヒマワリのような笑顔を見せる妹、体の大きな優しい兄、子どもの頃から野球を教えてくれた近所の「恩師」。さまざまな人たちとの関わりが古谷投手の心と体を成長させ、プロ野球へと導いた。

 「大のおじいちゃん子だった。葬儀ではひつぎの上から祖父の顔をのぞき込んで、ガラス面に涙がたまるほど泣いていた」と、父の輝紀さん(44)と母の理江さん(42)が振り返る。小学3年で野球を始めた古谷投手に道具一式を贈ったのは、帯広市内で酒屋を営んでいた母方の祖父の佐々木雅雄さん(享年67)。「頑固だったが、優人には甘かった」という。

 最近まで使っていたグラブも雅雄さんがオーダーメードで作ってくれ、内側に祖父の名前が刺しゅうされていた。大事な試合の前、古谷投手は、雅雄さんの生前の姿が映ったDVDを今も見る。

昨年亡くなった祖父の雅雄さんと小学生時代の古谷投手、兄の翔真さん(後列左から)。手前右は祖母の弘子さん、みりあさん=家族提供

亡き祖父、障害持つ妹支えに 
 雅雄さんは昔から熱心なプロ野球ファンで、巨人好きだった。祖母の佐々木弘子さん(69)=帯広=は、今も古谷投手が載った新聞を仏壇に置き、活躍を報告する。ドラフト当日の朝は雷雨で、「じいちゃんが天国でうれし泣きしているのかも」と家族で話した。

 生まれつき脳に障害がある妹みりあさん(9)は、古谷投手が「癒やし。ヒマワリのよう」という存在だ。生まれた直後は医師に会話や歩行は難しいとも言われたが、今は活発に話して歩き、古谷投手に甘える。取材中もじゃれ合ったり、一緒に折り紙をしたりと、古谷投手は名前通りの優しい笑顔をみりあさんに向ける。家族と一緒に試合の応援に出掛け、江陵野球部にとって「勝利の女神」ともなった。

 古谷投手より背が高い兄の翔真さん(19)は、江陵野球部のチームメートを車に乗せて温泉に行ったり、高校から近い実家に招き一緒にご飯を食べるなど、よき相談相手となった。ドラフト会議直後のテレビ番組で古谷投手が家族に読み上げた手紙は、生放送の時間の都合上、兄に向けた部分だけ読めなかった。「恥ずかしいので(言えない)」(古谷投手)という、その中身は、親にも言えない悩みを兄が聞いてくれたことへの感謝だ。

 翔真さんは幼少時からサッカーに打ち込み、両親も野球ファンではない中、古谷投手を野球へ引き寄せたのが近所の父親仲間だった。地域で焼き肉をした後にキャッチボールし、「肘の使い方がうまい」と野球を勧めた。バッティング練習ができるケージがある家が近所に2軒あり、古谷投手はよく通ったその場所を「道場」、近所の人を「恩師」と呼ぶ。

 現在も江陵高野球部の練習に通う古谷投手だが、現役時代に比べ、わずかだが時間ができた。夏は数年ぶりに家族でキャンプへも出掛けた。もうすぐ十勝を巣立つまで、家族や親しい人とつかの間の心安らぐ時間を過ごしている。(眞尾敦)

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