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高水分牧草サイレージの発酵品質を改善する 乳酸菌・酵素製剤

道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ

1.試験のねらい
 条件の悪い原料草(高水分、雑草割合高い)を用いて調製したイネ科主体牧草サイレージ(GS)において、乳酸菌・酵素製剤(Lactobacillus paracasei SBS00003, Lactococcus lactis SBS0001, アクレモ酵素混合)の添加による発酵品質の改善効果を明らかにする。

2.試験の方法
1 )チモシー、シバムギおよびリードカナリーグラス1番草を1L容プラスチックボトルでサイレージ調製し、無添加、乳酸菌・酵素製剤添加およびギ酸0.3%添加の発酵品質を比較する。

2 )地下茎型イネ科雑草が乾物比70%混合したチモシー1番草を乾物50t規模のスタックサイロでサイレージ調製し、試験処理は乳酸菌・酵素製剤の有無×スラリー施用時期とする。飼料中GS割合を乾物比で約50%とし、泌乳中期の経産牛8頭による1期19日間の飼養試験を行い、発酵品質および摂取量を比較する。

3 )平成24年8月~平成25年6月に雪印種苗分析グループが受入れたGS1番草487件(水分含量75%以上)を対象に、乳酸菌・酵素製剤の添加による発酵品質の改善効果を示す。

4 )春のスラリー施用を中止してGS1番草の調製を行った農家において、スラリー施用時期の変更と乳酸菌・酵素製剤の利用が発酵品質に及ぼす影響を調査する。

3.成果の概要
1 )乳酸菌・酵素製剤の添加により乳酸発酵が促進し、V-Score は94点以上となり、発酵品質は大幅に改善する(表1)。各草種とも無添加に比べ、乳酸菌・酵素製剤を添加したGSのTDNは5%程度高い。チモシーに酪酸菌を添加して調製したGSでは、乳酸菌・酵素製剤の添加により酪酸発酵はある程度抑えられ、発酵品質は向上する。

2 )発酵品質はスラリー施用時期による差はなく、これは施用したスラリーの水分含量がやや高いこと、刈取り高を10cm としたことにより、原料草へのスラリー混入が少ないためと考えられる。乳酸菌・酵素製剤の添加により、乳酸含量が増加し、V-Score は75点から90点となり、発酵品質は改善する(表2)。泌乳牛の摂取量および乳生産は処理間に差がみられず、これは無添加でも発酵品質が劣質とはならなかったためと考えられる。

3 )無添加のGSのV-Score の平均は71点であるが、乳酸菌・酵素製剤を添加したGSでは83点と高く、ギ酸と同程度の発酵品質の改善効果が得られる(表3)。V-Score が60点以下のGSの割合は、無添加では32%あったが、乳酸菌・酵素製剤を添加したGSでは15%と少ない。

4 )スラリー施用法の変更前は、乳酸菌・酵素製剤を添加しても、V-Score は28点、21個中16個でV-Score 60点以下と発酵品質は劣質となる割合が高い(表4)。春のスラリー施用を中止した後では、乳酸菌・酵素製剤の添加により発酵品質は改善する。

4.留意点
1)高水分原料草を用いたサイレージの調製時において、発酵品質を改善する際の参考とする。

2 )スラリー施用量の過剰、施用時期の遅延など、施用法が不適切な場合は発酵品質が改善しない可能性があるため、北海道施肥標準を遵守する。

3)本試験で使用した牧草サイレージ原料草の水溶性炭水化物含量は乾物中8%以上である。






V-Score:
サイレージのVFA(酢酸、プロピオン酸、酪酸)含量と総窒素中の揮発性塩基態窒素割合から算出する。
100点満点で評価し、80点以上が良、60~80点が可、60点以下が不可と判定される。

詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ 谷川 珠子
電話(0153)72-2116  FAX(0153)73-5329
E-mail:tanigawa-tamako@hro.or.jp

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