十勝毎日新聞 電子版

Tokachi Mainichi News Web

今年注意すべき病害虫

中央農試病虫部、各農試生産環境グループ、北海道病害虫防除所
北海道農政部、北海道農業研究センター

1.はじめに
近年の発生状況からみて今年特に注意すべき病害虫と、昨年新たに発生が認められた病害虫のうち、十勝地域に関わりの深いものを紹介する。これらの情報は、北海道病害虫防除所ホームページをご覧いただきたい。 http://www.agri.hro.or.jp/boujosho/

2.注意が必要な病害虫
1) 秋まき小麦の赤さび病
平成25 年は、十勝地方を含む道内各地において、本病が近年にない多発生となった。5 月下旬から6 月上旬に、発生に適した高温少雨傾向であったことが多発の要因と考えられる。同年は本病抵抗性「やや強」品種の「きたほなみ」でも多発したことが特徴的である。「きたほなみ」の抵抗性が打破されたと一概には言えないが、25年秋の調査においても本品種に例年より多い発病を認めている。このため、平成26 年も発病に好適な高温乾燥条件となれば、「きたほなみ」でも本病多発の可能性がある。
本病防除にあたり、開花始の止葉病葉率を25%(被害許容水準)未満に抑えるため、止葉抽出までに下葉に病斑が目立つ場合には、止葉抽出から穂ばらみ期に薬剤を散布する。この防除は抵抗性“弱”の品種で必要になるとされている。しかし、平成25年の発生状況から、主要品種「きたほなみ」でも本病が多発する可能性があるので、品種にかかわらず越冬後の本病発生推移を観察し、必要な対応を行う。その際、十分な防除効果を得られるよう、散布タイミングが遅れないように注意が必要である。なお、赤かび病との同時防除となる開花始の防除は基本である。

なまぐさ黒穂病発病穂

2)秋まき小麦のなまぐさ黒穂病
発生記録のほとんどなかった本病が、平成25 年には3 振興局内の複数地域で確認され、中には激発事例も含まれた。本病の罹病株は稈長がやや短くなるが、軽微な場合は識別が困難である。暗緑色を帯びる病穂(写真右)の内部は茶褐色の粉状物(厚膜胞子、写真左:切開して内部を露出)が充満するが、外皮は破れにくく、裸黒穂病のような胞子の露出、飛散はない。病穂は生臭い悪臭を放ち、発生すると減収のみならず異臭による品質低下を招く。さらに、汚染された生産物が乾燥調製施設に混入すると、施設全体の生産物が汚染されるため被害は大きくなる。発生ほ場産の汚染種子は翌年の発病につながるので、本病対策として、健全種子の生産と使用は最も重要である。

たまねぎりん球の幼虫食痕

3)たまねぎ及びねぎのネギハモグリバエ
平成25 年、石狩、空知、上川、オホーツク地方にかけてねぎ、たまねぎでネギハモグリバエの被害が多発した。本種はねぎ類やにらなどネギ属のみを餌とし、葉の内側から不規則な線状の食痕を残す。多発ほ場のたまねぎでは、りん茎まで広がった幼虫加害による出荷物の品質低下が問題となる事例もあった。同年の発生状況から、道内では例年になく越冬密度が高いと思われる。そのため、当面はねぎ類において本種発生および被害に対する注意が必要である。成虫は葉に縦に数個並んだ白い点状の食痕(次ページ写真)を残すので、これが早期発見の手がかりとなる。

ネギハモグリバエ成虫と食痕

空知地方では、6月に第1回幼虫の発生が確認されており、成虫は5月下旬から6月上旬に発生していたものと推察される。
本種は多くの薬剤に対し感受性が低く、幼虫は葉に潜って内側から加害するため薬剤による防除効果が得られにくい。したがって、薬剤防除にあたってはほ場をよく観察し、早めの防除を心がける。

スイートコーンのヨトウガ加害状況

4)各種作物のヨトウガ
平成25 年はヨトウガがそれまで数年間の少発から一転して多発生となった。同年は、てんさいのみならず、広汎な作物での多被害が特徴的である。例として、茎葉、支根を食害されたデントコーンの倒伏、かぼちゃの果皮、スイートコーンの雌穂、にんじんやそばの茎葉などがあげられる。いずれも、通常は問題となりにくい本種被害に気づくのは幼虫が老齢に達した以降であり、老齢幼虫に対する殺虫剤散布では十分な防除効果が得られなかった。
このように、主要な被害作物でなくとも、幼虫が多発して大きな被害を受けることがあるため、畑作物、野菜を問わず、通常はヨトウガ防除を予定しない品目でも、ほ場観察を励行し、発生を早期に把握する必要がある。本種幼虫に対する殺虫剤の防除効果は若齢期に高く、生育するに従って低下するので、防除適期を失しないよう、防除要否の判断をできるだけ早期に行う必要がある。
-
3.新たに発生を認めた病害虫(抜粋)
1)とうもろこしの炭疽病Colletotrichum graminicola【新発生】
 標茶町でデントコーンに発生。葉の小斑点が紡錘形、楕円形の褐色斑点に拡大、融合して大型病斑を形成した。

2)ながいものモモアカアブラムシ、ワタアブラムシ【新寄主】
 ヤマノイモえそモザイク病の病原ウイルスの媒介虫として、ジャガイモヒゲナガアブラムシに加えて正式に記録。

3)ブロッコリーのヒメダイコンバエ【新寄主】
 釧路、根室、オホーツク、宗谷地方に限定的に発生するアブラナ科作物の害虫。根室地方で多発してだいこん、ブリッコリーに大きな被害をもたらしている。

4)レタスの株腐病Phoma exigua【新発生】
 地際部が黒変腐敗し、生育不良、結球不良となる。

5)レタスのネギアザミウマ【新寄主】
 たまねぎやアスパラガス隣接ほ場で結球内部に褐変症状。被害が芯部まで認められる事例もあった。

4)たまねぎのネギハモグリバエ【新症状】
 注意すべき病害虫の項を参照。多発条件下で鱗球内部に食入し、収穫物の品質低下を招く被害。

5)かぼちゃの果実斑点細菌病Pseudomonas syringae pv. syringae【新症状】
 長年原因不明であった西洋かぼちゃの「突起症状」の原因を特定した。

詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。

道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
電話(0155)62-2431、E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

更新情報

マチルダに未来めむろ牛…芽室の味覚に行列 大感謝祭盛況

紙面イメージ

紙面イメージ

11.22(金)の紙面

ダウンロード一括(99MB) WEBビューア新機能・操作性UP

日別記事一覧

前の月 2024年11月
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

十勝の市町村

Facebookページ

記事アクセスランキング

  • 昨日
  • 週間
  • 月間

十勝毎日新聞電子版HOME