十勝毎日新聞 電子版

Tokachi Mainichi News Web

地域で黒毛和種繁殖雌牛の改良を進めるシステム

道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ

1. 試験のねらい
道内黒毛和種は、繁殖雌牛飼養頭数9万頭を超え全国3位の主要産地となっている。しかし、先進県に比べ遺伝的能力が低いとされており、改良については先進県からの導入に頼る傾向がある。こうした中、近年になり道内関係機関から優良な種雄牛が多く作出されている他、道内繁殖雌牛の育種価判明率も徐々に向上していることから、道内遺伝資源を活用した改良体制の確立が求められている。
そこで本試験では、地域内の遺伝資源を活用した改良体制を確立するため、育種価や繁殖台帳を活用した地域繁殖雌牛群の改良システムを開発し、現地実証する。

2. 試験の方法
1)子牛の発育と枝肉成績との遺伝的な関係を明らかにする(分析対象:道内産子2,866頭)。さらに、胸囲を測定することで子牛の体重を推定することが可能な推定式を開発する(分析対象:畜試牛群発育データのべ4,751件)。
2) 繁殖雌牛の年齢と子牛出荷体重との関係を明らかにし、繁殖雌牛の淘汰更新目安を設定する(分析対象:道内産子204,747頭)。さらに、牛群における優良牛や淘汰候補牛を抽出することが可能な繁殖台帳ソフトを開発する。
3) モデル地域(A町:繁殖雌牛飼養頭数約1,400頭)において、「育種価および繁殖台帳を活用した地域繁殖雌牛群の改良システム」の構築を進め、牛群の改良効果および成績不良農家の技術改善効果を実証する。

3.成果の概要
1)子牛出荷体重における直接遺伝効果と枝肉重量との間に0.62の高い正の遺伝相関が認められたことから、子牛の発育状況は、枝肉重量の期待育種価を補足する情報として活用できる。
2) 開発した胸囲(CG)から体重が推定可能な子牛の体重推定式は以下のとおりである。めす体重=exp(-5.407E-01+7.248E-02×CG-2.706E-04×CG2+3.979E-07×CG3)。この式は、フィールドデータにおいても197頭中195頭が推定式の95%予測信頼区間内の範囲に含まれており、高い精度を誇る。
3) 若齢牛(1~2才)および高齢牛(11才以上)が生産した子牛は、市場出荷体重が低下する傾向にあり、遅くとも11才(9産)を目安に繁殖雌牛の淘汰更新を進めることが望ましい。
4) 開発した繁殖台帳ソフトは、各農家の牛群情報、優良牛、および淘汰候補牛の帳票を表示可能である。
5) 開発した「育種価および繁殖台帳を活用した地域繁殖雌牛群の改良システム」を導入することで(図1)、モデル地域における新規保留牛に占める期待育種価判明牛の割合は3割近くまで増加した(表1)。また、枝肉重量と脂肪交雑の期待育種価がAランク(道内牛群上位1/4以上の能力)である雌牛の保留割合も8割以上に増加した(表2)。さらに、モデル農家における子牛の発育が改善し、市場における価格も十勝市場平均を上回るまでに向上した(図2)。

4. 留意点
1)改良システムは、道内黒毛和種生産地域が効率的な牛群改良を進める際に導入する。






詳しい内容については下記にお問い合わせください

道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ 鹿島聖志
電話 0156-64-0606 FAX 0156-64-6151
E-mail kasima-masasi@hro.or.jp

更新情報

ラグビー界で世界初の快挙、レフェリーでも五輪へ 桑井亜乃さん「体を仕上げていく」パリへ意気込み語る

紙面イメージ

紙面イメージ

5.30(木)の紙面

ダウンロード一括(96MB) WEBビューア新機能・操作性UP

日別記事一覧

十勝の市町村

Facebookページ

記事アクセスランキング

  • 昨日
  • 週間
  • 月間

十勝毎日新聞電子版HOME