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帯広空港と大樹視察 米ロケットプレーン社

一般人を対象に高度100キロ付近での無重力体験飛行の事業化を目指す米ベンチャー企業、ロケットプレーン社(オクラホマ州)のチャールズ・ラウアー副社長が14日、初めて来勝し、とかち帯広空港と大樹町多目的航空公園を視察した。日本での宇宙ビジネスの事業化に向け、離発着できる候補地探しの一環。「十勝は非常に魅力的。できるだけ早く実現したい」と話し、両拠点の滑走路利用に強い意欲を示した。
同事業は、ロケットエンジンを搭載した改造ジェット機を使用。通常の飛行機と同じように離陸し、途中からロケットエンジンを噴射して高度100キロまで上昇。自由落下で約3分半から4分の無重力体験ができるもの。離陸から着陸までは約50分。同社は2007年から米オクラホマ州の空軍基地を拠点に事業を始める予定で、米国では1回の飛行運賃を約2000万円と見込んでいる。
ラウアー氏は同社が技術協力契約を結んでいるNPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(札幌、HASTIC)の伊藤献一副理事長兼専務理事とともに訪れた。同空港と航空大学校帯広分校を視察した後、大樹町に移動して同公園を訪れ、管制塔などを見て回った。
帯広空港については「飛行訓練の場もあり、われわれの事業構想に合っている」とし、同公園については「現在の滑走路(全長約1キロ)を2、3キロに延長すれば、ジェット機が離着陸できる」と述べ、設備を整える必要があるとの認識を示した。
伏見悦夫大樹町長と砂川敏文帯広市長をそれぞれ表敬訪問。十勝から宇宙へ改造ジェット機が飛び立つCG映像を見せ「北海道の地形の美しさは世界一。宇宙遊覧飛行の利用者が喜んでくれる」と力説。「十勝でのビジネスは、米国での取り組みが順調に推移した後にできるだけ早く実現したい」と語った。
「宇宙空港」の実現には、航空関連法の整備が最大の課題となっているが、伏見町長は「非常に夢のある話。実現は難しいかもしれないが、大樹町から宇宙旅行ができる可能性が一歩前進した」と話した。砂川市長は「地域としてもビジネスが軌道に乗るよう、できる限り応援したい」と歓迎した。
(松村智裕、井上朋一)

解説
/好機到来も法制面に難題/
米国のロケットプレーン社が構想する十勝からの無重力体験飛行には、まず日本の航空法が実現の壁となり、事業化については未知数だ。
同法には「宇宙旅行」の概念はなく、同社の改造ジェット機が「飛行機か、ロケットかの判断もできない」(帯広市)のが現状で、現行法下では商業飛行許可は難しい。
ラウアー氏も「日本(の省庁)には宇宙旅行の窓口がない」と指摘し、HASTICの伊藤副理事長は「政治家を通した働き掛けが必要。HASTICとしても導入要望を出すつもりだ」と話す。
法改正も含めた日本での実現には技術的な安全性の証明も必須で、来年度から予定するアメリカでの商業飛行で実績を積むことは不可欠。また大樹町多目的航空公園の滑走路延長など施設整備の負担をどうするかも未定。実現への課題は多い。
ただ、海が近い十勝はロケットエンジン着火時の衝撃波の影響が避けられ、設備の整った帯広空港と広大な敷地を持つ大樹町航空公園は好適地とされる。町では「特区も1つの方法」と期待する。
ラウアー氏は「これはとても長期のビジネス」と時間をかけても実現を目指す姿勢を示しており、大樹・帯広にとっても来るべき「宇宙時代」に向けた大きなチャンスとも言える。(小林祐己)

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