離農予定農地借り受け農業ビジネス進出 幕別の那須商店 大手ホテルレストランへ出荷目指す
【幕別】灯油販売業の那須商店(幕別町本町、那須盛章社長)が、早ければ2026年にも農業事業に乗り出す。同町相川地区の農地を借り受けて野菜を生産し、首都圏のプリンスホテルのレストランに提供する計画。1月には農業事業を担う法人「とかちサンシャイン農園」も設立した。那須社長は、借り受け予定農地で野菜栽培のノウハウを学び始めており、「食を通じて幕別をPRできる農業事業も成功させたい」と意気込んでいる。(本田龍之介)
那須社長は1976年幕別町生まれ。幕別小・中、函館ラ・サール高、上智大卒。2001年にコクド(当時)に入社、組織改編を経てプリンスホテルを運営する「西武・プリンスホテルズワールドワイド」(本社東京)で主に人事・管理業務に従事した。22年に父將生さん(23年12月他界)が病に倒れ急きょ帰郷して家業を継いだ。
帰郷して間もなく、農地約28ヘクタールでレタスやキャベツ、タマネギ、アスパラなどを栽培する顧客の大道健實さん(72)から、離農を検討していると相談された。灯油販売・配送事業は冬場が中心で夏場に需要が大きく低迷する。半面、「夏場に収益が見込め、前職の人脈を活用して首都圏のプリンスホテルのレストランに出荷できる」と農業事業に可能性を見いだした。
首都圏ホテルへの出荷構想を進めるにあたり、昨年10月にはプリンスホテル料理長を幕別に招き、地元食材を紹介。これをきっかけに、プリンスホテル系列のザ・プリンス パークタワー東京で今月に開催された「北海道フェア2024」(27日~6月30日)で幕別産品が使用されている。チーズ工房「NEEDS」チーズや忠類の野坂農場のユリ根、途別の横山渡さんのネギを使った料理が特別ディナーとして提供された。
26年ごろの事業化を目指す那須社長は、4月から大道さんの農場で本格的に野菜栽培のノウハウを学んでいる。「新たな考えで農業の持続的な発展に貢献してほしい」と大道さんからも期待されており、「生まれ育った幕別の知名度向上に少しでも貢献したい。将来的に東京と幕別の人的交流にもつなげたい」と話している。