映画「馬橇の花嫁」撮影開始 幕別出身の逢坂さん監督、昭和の農村再現「後世に」
幕別町出身の映像作家逢坂芳郎さん(43)が脚本・監督で、昭和30年代の十勝の農村を舞台とした短編映画「馬橇(ばそり)の花嫁」の撮影が管内で始まった。募集に応じて全国各地から集まった出演者やスタッフが撮影。馬と共にあった開拓時代の晴れやかな祝儀の様子を、映像で後世に伝える作品で、逢坂さんは「地域史料として残したい」と力を込める。(北村里沙)
同作品制作のきっかけは、逢坂さんが帯広市内で偶然目にした1枚の写真。馬そりに乗って嫁入りする女性が写っていて、引き込まれ「映画に昇華させたい」と考えた。史料をたどり、実際に馬そりに乗って「嫁入り」した女性に話を聞いた。プロデューサーは東京で映像制作に携わる堀康之さん(池田町出身)ら。構想から足かけ約5年、11日から管内で撮影に入った。
13日午後からは、大樹町内の離農した農場跡で、ジャガイモ選別のシーンや、馬と出演者が接する場面、馬小屋前、家の中での会話の場面などを撮影した。馬車や農具などは昭和30年代の史実に基づいて用意した。馬は幕別町のノースポール・ステイブルの代表、蛭川徹さん(47)が飼育している「桃姫」(雌、15歳)などを使った。
そりに乗って嫁ぐ戸山一子を演じる東盛あいかさん(25)は沖縄県与那国島出身。幼少期から島の与那国馬と触れ合っていたことから馬には「親しみがある」と笑う。東盛さんは「北海道と沖縄は歴史の中でも共通点があり、戦後は交流も増えた。島には北海道出身の方も多くいるので新たな架け橋になれてうれしい」とまっすぐな瞳で語った。
映画制作では出演者やエキストラを公募。一子の父、正男を上士幌町在住の八下田智生さん(53)が、一子の妹の芙美子を帯広市出身で東京の日本大学芸術学部放送学科1年の三輪美月姫さん(18)が演じるなど、地元住民も出演する。三輪さんは演技初挑戦で「ずっとどきどきしている」と緊張しながらも目を輝かせていた。一子の家族役の女性たちは撮影期間中、「川の字」で寝て仲を深めているという。
9月中は北海盆唄の歌唱シーンなどを撮影する。今冬にもロケを行い、来年夏の完成を目指す。逢坂さんは「道外の方と地域の人が映画を作るのが楽しい。順調に進んでいる」と手応えを語る。制作資金はクラウドファンディングで募っている。詳細はCFサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」へ。