なぜ登る? クマ連続襲撃で道が登山自粛呼び掛けるカムエク山
【中札内】7月中旬以降に2人の登山者が相次いでクマに襲われた中札内村のカムイエクウチカウシ山(1979メートル)。道は再発防止のため「登山自粛」を呼び掛けているが、最初の事故後、入山した人は少なくとも60人以上に上る。クマが人を襲ったばかりの“危険な”山になぜ登るのか。13日に登山者に取材した。(高田晃太郎)
13日午後2時ごろ、登山口最寄りの札内川ヒュッテ。駐車場には、登山客や釣り人らの車約20台があった。そのうち半分は道外ナンバーだ。下山したばかりの東京の川島秀雄さん(56)は「手つかずの自然が残る山は素晴らしかった」と振り返った。「事故のことはヤフーニュースで知っていた。行政が自粛を呼び掛けているとは知らなかった」
日本300名山の全登頂を目指し、200名山の一つである同山を訪れた。最初にクマに襲われた神戸市の男性は笛を吹いて追い払ったとニュースで読み、今回はホイッスルを持参した。「2日を要する難易度が高い山なので、この日のためにトレーニングを積んできた。クマの事故が続いたからといって、登山をやめる考えはなかった」
妻との登山を終えた金沢市の男性(49)は「(事故現場に近い)八ノ沢カール付近には、クマのふんがたくさんあった」と語った。
クマ対策として、笛と鈴だけでなく、クマよけスプレーも1人1本ずつリュックの外側に装備した。行政の自粛要請は「知らなかった」とし、「クマはどこにでもいるし、怖がっていたら道内の山は登れない。火山噴火で規制するならともかく、クマが理由で入山禁止にするのはやめてほしい」と注文した。
名古屋市の小嶌勝也さん(61)は「これまで道内の山で3回クマと遭遇したが、全て自分から逃げていった。襲われる確率は宝くじに当たるより低いのでは」
登山愛好家の一部からは、人を襲ったクマについて「可能なら駆除してほしい」という声も聞かれる。帯広市から訪れた男性(68)は「それは間違いだと思う。もしクマに襲われても、自分でそういう状況を作り出したのだから、天命だと思うしかない」と言い切り、登山口に向けて出発した。