帯広競馬場に初のインド人厩務員 人手不足が背景 仕事ぶりも高く評価
帯広競馬場でばんえい競馬を主催する帯広市は、競走馬を世話する厩務(きゅうむ)員として外国人では初となるインド人を受け入れた。人手不足が背景にあり、すでに仮厩務員として勤務している。「覚えが早く、仕事ぶりも真面目」と調教師の評価も高く、近く地方競馬全国協会の審査を経て正式に市に認可される見込みだ。
インド人はビハール州出身のハミド・アラームさん(36)。競馬が盛んなインドの競馬場で20年以上、サラブレッドの調教に従事した経験を持つ。今回、インドの6倍にもなる日本の給与面などに魅力を感じ、妻を母国に残して来日。10日に雇用主の村上慎一調教師(47)=足寄町出身=と市に申請し、翌日から住み込みで馬房の清掃や運動、餌やりなどの業務に励んでいる。
ヒンディー語が母語のハミドさんとの意思疎通は手のひらサイズの翻訳機や身ぶり手ぶりに頼るが、「扱うものは動物なので、言葉は問題ではない」(村上調教師)。
受け入れた背景には、厩務員の深刻な人手不足がある。村上調教師が厩舎(きゅうしゃ)を開いた15年ほど前は、11頭の馬に厩務員が3人いた。現在は35頭と3倍に増えた一方、厩務員は3人にとどまる。「朝早く、休みも不規則な厩務員の仕事は若い人に避けられがち」で、他の厩舎でも慢性的に不足している。
調教師が厩務員の仕事を手伝うこともたびたびあり、調教師会が外国人の受け入れを要望。市は厩務員になるために必要だった戸籍謄本の提出を免除し、押印ではなく自筆サインでも可にするなど、運用を変更して受け入れが可能となった。
日高管内日高町の門別競馬場では、既に32人のインド人厩務員が在籍する。村上調教師もそうしたインド人の働きぶりを知り、自身の厩舎の馬主で門別競馬場にも馬を卸している三田正真さん(69)=音更町=に仲介役を依頼した。
帯広競馬場の厩舎地区には共同浴場しかないため、三田さんは他人と一緒に体を洗う習慣のないハミドさんのために、シャワー室を新設するなどして手助けした。
村上調教師の厩舎には今週中にも別のインド人が入り、数週間の研修の後、別の厩舎に移る予定。
さらに2人の申請も受けているといい、村上調教師は「ハミドには後から来るインド人の先生役として、仕事や生活面も教えてほしい」と期待する。
ハミドさんも「いずれ妻を日本に呼び、裕福な暮らしを送らせてやりたい」と話している。
(高田晃太郎)