天国に届け- 音楽仲間が追悼 台風で死去の鈴木さん
天国の仲間に届け-。台風10号の影響で崩落した大樹町内の橋から川に車ごと転落し、犠牲になった音更町の会社員、故鈴木洋平さん(享年28)は、音楽をこよなく愛するギタリストとして周囲からも尊敬される存在だった。3日夜には鈴木さんの音楽仲間が、帯広市内のライブ&パブ「CHABO」で行われた音楽ライブ「おとの木」に出演し、追悼の祈りを込めて演奏を響かせた。
「誠実で真面目。音楽にも真剣に向き合う姿が印象的だった」。鈴木さんが所属していた3人組ユニット「colors」の1人でベース担当の伊藤拓郎さん(29)=音更=は、同世代の仲間の早すぎる死を悼んだ。
colorsは鈴木さんの加入をもって昨年7月ごろに結成。CHABOで定期的に開かれるライブで演奏する機会が多く、ボーカル担当の藪みつ美さん(42)=札幌=は「3人がそろえば4月以来のライブになるはずだった。札幌からここへ来る途中、台風被害を目の当たりにして言葉を失った」と話す。
鈴木さんと3年前に知り合い、音楽仲間として親しかった市内のシンガー・ソングライター池田正樹さん(39)はニュースで鈴木さんの訃報を知り、「初めは信じられず、彼の友人を介して確認した。10月に一緒にバンドを組んでライブに出る予定だったのに…」と言葉を詰まらせる。
2日には自身のフェイスブックに「お前が好きだって言ってた曲だよ。届け。」と文章を添え、自ら作詞作曲した「38号線沿いの孤独」をギターで弾き語りする動画を公開した。「彼も天国から、この動画を見てくれたかな」
3日のライブでは池田さんやcolorsなどが出演。藪さんと夫でカホン担当の雅弘さん(41)、そのそばに鈴木さんの姿が映し出されたパソコンを置いたまま演奏が行われ、最後は池田さんと伊藤さんも加わった。藪さんはユニット結成時の裏話や現在の心境を交えて「5人での演奏を聴いてください」と語り、自身が作詞、池田さんが作曲した「あおぞら」を披露した。
「今でも心の中に生き続けている」。鈴木さんとの思い出を胸に、それぞれが前を向くことを誓った。(小縣大輝)