「私の男」への思い語る 熊切監督インタビュー
帯広出身の映画監督熊切和嘉さん(40)の最新作で、モスクワ国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀男優賞を獲得した「私の男」の上映会が6、7日、帯広市民文化ホールで開かれる。舞台あいさつのため帰郷した熊切監督に、「私の男」への思いや次回作への意欲などを聞いた。(聞き手・高橋宏幸、写真・塩原真)
―モスクワ国際映画祭最優秀作品賞の受賞を知ったときの気持ちは。
賞の発表当日は台北映画祭の審査員として台湾にいた。プロデューサーから携帯電話に着信がいっぱいあり、「何か賞に引っかかったのかな」とタクシーの中で電話したら、「それどころじゃないよ。グランプリですよ」と伝えられた。僕もタクシーの中で叫んでしまった。日本で盛り上がっていたときを身近に見ていなかったので、話題になっていたことは後になって知った。
―「私の男」を振り返って。
15年やってきた今だから撮れたと思う。すごく難しい男女の関係を描いたとは自分でも思っている。実際あり得ることだと思うし、それを色眼鏡なしに、変に美化せず厳しさを持った上で描きたかった。賞なんて全然考えていなかった。本当に好き放題やった映画がこういう結果になり、やっぱり映画は好き放題、自由にやるべきだと改めて思った。
―「私の男」では父と子の愛を描いた。タブーへ挑戦していく意欲の源は。
うそっぽいところには毒を吐きたい。また、僕自身、強烈な映画が好き。マーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」を初めて見たとき、どう見ていいのか分からないが、なんか圧倒されるという感じが好きだった。そういう映画を久しく見ていないなと思い、たたかれても自分が撮ってやろうという覚悟でやっている。後々たたかれても作ってしまえば映画は残るから。
―バンド「THE BACK HORN(バックホーン)」と熊切監督による映画「光の音色 THE BACK HORN Film」が11月1日から公開される。
バックホーンはデビューが同じ年で、初期のころにPVを撮らないかという話もあったが撮れず、15年たってまた話が来て縁を感じた。最近は濃厚なドラマものが続いていたので、毛色の違うことをやりたかった。ドラマパートはウラジオストックで撮影し、現地のミュージシャンや素人を使い、自主映画を作っているようで面白かった。ライブシーンもすごく気持ちが走っていてかっこいい。
―12月からフランスへ留学するそうですね。
じっくり映画のことを孤独になって考えたいという思いがあった。表向きは勉強だが、こっそり映画を撮りたいなとも思っている。
―次回作の予定は。また、今後十勝での撮影の可能性は。
企画はいくつか動かしている。また十勝で撮りたいし、具体的にも考えている。最近北海道の冬を映す作品が続いたので、今度は秋を狙いたい。
―今後の目標は。
いろいろ撮ってきたようで、まだまだ「ああいう映画も撮りたいな」とか思うのもあるので、後悔しないように全部撮りたい。男っぽい作品もやってみたい。映画は時間がかかってしまうので、一本一本大事だなと思う。
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「私の男」帯広上映
6日午後7時からと7日午前10時からの2回、帯広市民文化ホールで開かれる。いずれも熊切監督の舞台あいさつがある。前売り1400円、当日一般1800円。なお同映画は「R15+指定」(15歳未満の入場・鑑賞禁止)作品。問い合わせはCINEとかちの豊島晃司さん(090・9081・1597)へ。
◆熊切さん監督作品「私の男」について
・映画『私の男』-公式ホームページ
・「私の男」全国公開 熊切和嘉監督インタビュー-十勝毎日新聞電子版(2014/06/14)
・遊楽ナビ「来月公開の熊切監督『私の男』主演浅野忠信さん」-十勝毎日新聞電子版(2014/05/23)
◆『熊切和嘉(くまきり かずよし)』
・熊切和嘉氏-ウィキペディア。日本の映画監督。北海道帯広市出身。
・熊切和嘉監督関連記事-十勝毎日新聞電子版
◆モスクワ国際映画祭について
・歴代最優秀作品など、モスクワ国際映画祭関連の情報-ウィキペディア