「3年分の思い込めぶん投げた」逆転優勝の寺井 高校総体円盤投げ
〈陸上〉
(1日・大分スポーツ公園大分ドーム)
第3日が行われ、十勝勢は女子円盤投げや男子800メートルなど4種目に登場した。女子円盤投げ決勝では寺井沙希(帯農3年)が44メートル43で優勝、高橋希(同)が39メートル78で9位に入った。同種目での道内勢の優勝は、2005年の緒方えりこさん(当時帯農)以来8年ぶり3人目。男子800メートル予選では、酒井健吾(帯農3年)、谷口昂平(白樺学園3年)ともに準決勝進出はならなかった。男子砲丸投げ予選は帯農勢3人がそろって2組に登場し、山下雄也(帯農3年)の13メートル64での組19位が最高だった。男子走り幅跳びの河瀬遥紀(白樺学園3年)と竹村柾人(同1年)は予選落ちした。(北雅貴、金野和彦)
堂々の逆転優勝 帯農業・寺井沙希
「誰よりもいっぱい練習してきたから」
44メートル04の吉留明夏里(大阪・関西大倉3年)らを追う展開にも、寺井沙希の勝利への自信は揺るぎなかった。「3年分の思いを込めてぶん投げた」という6投目は、放物線を描きフィールドの中央に落ちた。44メートル43。全道高体連でマークした道高校新記録の48メートル07には及ばなかったが、堂々の逆転優勝だ。
優勝が決まった瞬間、大きくジャンプしガッツポーズ。仲間のいるスタンドへ手を振りながら駆け寄った。「とにかく勝ちたかった。やってやったぞとの思い」と声が弾んだ。
帯農で18年指導し、国体など全国優勝者を7人も輩出してきた西山修一監督はスタンドで、寺井の喜ぶ姿を見て涙をぬぐった。カメラに納めようとするが手が震えてピントが定まらなかった。「全国の決勝で、最後の試技で逆転した選手は初めて。これまでで一番の劇的なドラマ」と喜んだ。
昨年の全道高体連で雨で足を滑らせて1投目にファール。優勝はしたが寺井は「サークルに入ると思い出し体が動かない。トラウマになった」と伸び悩んだ時期があった。練習量で克服して栄光をつかんだ今年の全道高体連後は「インターハイの1投目で優勝を決められる」(西山監督)ほど絶好調だったが、しばらくしてウイルス性の胃腸炎にかかった。2日間寝たきりで嘔吐(おうと)を繰り返し、体重が4キロも減った。体力と筋力が戻らず調子も崩したが、土壇場ですべてをはねのけた。
札幌平岡中出身。寮生活を送り、女子部の主将を務める。父の武可さん(44)は、たまに帰省する娘の言動から「一歩引いて周囲に気を遣ったりできるようになった」と目を細める。心技体の成長を周囲に見せた大会となった。
次は日本ジュニア選手権などで日本高校記録(50メートル61)超えを目指し、「将来は日本のトップとして活躍したい」と目標は大きい。
大舞台で自己新 帯農業・高橋希
○…大舞台で自己新記録を出した高橋希は、「(寺井と)一緒に表彰台に上がろうと約束していたので少し悔しいけど、うれしい」と苦笑いを浮かべた。
練習では40メートルをマークするなど好調を維持していた。予選は、全道の39メートル01を1投目で81センチ上回った。決勝の1投目も39メートル78を記録したが、狙っていた40メートルには届かず、4投目以降に進める上位8人にあと一歩及ばず9位だった。
昨年のインターハイは、緊張で手が震えて34メートル台。「3年生として絶対良い結果を残したい」とリバースを取り入れる新フォームに取り組み飛躍につなげた。「今回は緊張せず、堂々と思い切りできた」と心から楽しんだ。
浦幌中では全国経験はなし。「仲間と上を目指せて良かったし、自分も成長できた」と感謝の言葉を口にした。
自己ベスト更新も複雑 帯農業・酒井健吾
○…「ベストはうれしいが…」。酒井健吾は、1分54秒55の自己ベストに喜びと悔しさが入り交じった複雑な表情を見せた。
400メートルはこれまでで最高の55秒台で通過。集団の後方から600メートルでペースアップ、持ち味の後半のスパートを試みた。全道ではごぼう抜きできるが、「足(に余力)をためている選手が予想以上にいた」と、順位を上げられず6位にとどまった。
1年前は貧血などから練習もできずに記録も低迷したが、全国で1500メートルと2種目を堂々と走り切った。「楽しかったし、自分の力のなさも実感できた」。今月下旬の国体道予選で1分53秒台で優勝し、再び全国の舞台を踏むことを誓った。
男子800メートルの谷口昂平の話 全道以降腰のけがでほとんど練習できなかった。昨年のインターハイで悔しい思いをしたので、今年は準決勝に残りたかったが仕方ない。今月に行われる国体道予選に気持ちを切り替える。
男子砲丸投げの山下雄也の話
陸上は今回が最後の大会なので、悔いの残らないように投げた。記録はいまいちだがこれが自分の力。2年連続でインターハイに出場できたのは指導者や仲間のおかげで、感謝の気持ちでいっぱい。
(関係分)
【男子】<予選>
◇800メートル(8組2着+8準決勝へ)
▽4組=(8)谷口昂平(白樺学園)1分59秒86
▽6組=(6)酒井健吾(帯農)1分54秒55
◇走り幅跳び(通過基準記録7メートル20)
▽1組=(28)竹村柾人(白樺学園)6メートル48 河瀬遥紀(同)記録なし
◇砲丸投げ(通過基準記録15メートル30)
▽2組=(19)山下雄也(帯農)13メートル64(29)松本陸玖(同)13メートル06(31)澤邊翔平(同)13メートル00
【女子】<予選>
◇円盤投げ(通過基準記録39メートル00)
▽2組=(7)高橋希(帯農)39メートル82(10)寺井沙希(同)39メートル34
<決勝>
◇円盤投げ=(1)寺井沙希(帯農)44メートル43(9)高橋希(同)39メートル78