乳用牛舎の上手な換気方法~夏の暑熱対策と冬の結露防止のガイドライン~
道総研 酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ
道総研 北方建築総合研究所 建築研究部 環境システムグループ
1.試験のねらい
機械換気導入牛舎における適切な牛舎内環境を明らかにし、適切な機械換気設備の設計指針を提示する。
2.試験の方法
1)既存の機械換気牛舎の実態調査から適切な換気設備の設計および運転方法の設計値を明らかにする。
2)実態調査の結果を基に数値解析を行い、機械換気導入における設計シートを開発する。
3)開発した設計シートを用いて機械換気の導入効果および消費電力量削減効果を検証する。
3.成果の概要
1)暑熱期の機械換気牛舎では出荷乳量への影響が小さく、送風機による1m/s以上の送風により体感温度を低下させ、牛舎内温度-外気温度が1℃以下の機械換気の運転方法を実施していたことから、暑熱期では牛舎内風速を1m/s以上、牛舎内温度-外気温度が1℃以下を機械換気設備の配置および運転の設計値とした。寒冷期の夜間の牛舎内と外気との絶対湿度差は、機械換気牛舎の方が自然換気牛舎よりも低かった。機械換気牛舎2棟では結露発生の目安となる外気との絶対湿度差(1.3g/kg’)を上回っていたものの、結露の発生がみられなかったことから、寒冷期では牛舎内と外気との絶対湿度差が1.7g/kg’以下を設計値とした。
2)寒冷期の哺乳牛舎では、牛舎内の二酸化炭素(CO2)濃度および夜間の牛舎内温度に大きな違いは見られなかったが、日中および夜間の牛舎内絶対湿度は陽圧換気ありの牛舎で低かった。一方、夜間の牛舎内の外気との絶対湿度差に差はみられなかった(表2)。上記より、哺乳牛舎の陽圧換気の設計値は、牛舎内絶対湿度終日2.5g/kg’以下、夜間の牛舎内と外気との絶対湿度差を0.5g/kg’以下にすることが適当と考えられた。
3)成牛舎および哺乳牛舎の機械換気について1)および2)の結果を基に数値解析を行い、「換気扇設計シート」、「送風機設計シート」および「陽圧換気設計シート」を開発した(表3)。また、暑熱期の成牛舎の必要換気量は牛舎内容積や牛の密度よりも屋根の断熱による影響が大きいと考えられた(データ省略)。
4)設計シートに基づき成牛舎(A)において日中(8~18時)の換気扇と送風機の運転方法を変更することにより、牛舎内温度と風速を維持しながら、消費電力量を7~12%低下させることができた(表4)。また、哺乳牛舎1棟にシートダクトを導入した結果、牛舎内の絶対湿度や外気との絶対湿度差は既存のシートダクト導入牛舎と同程度であったが、導入前よりも牛舎全体のCO2濃度の差が小さくなり、浮遊細菌数も減少する可能性が示唆された(データ省略)。このことから設計シートの有効性が確認できた。
4.留意点
1)成果はJAや農業改良普及センター、建築会社などが、牛舎を設計・建築する際に活用できる。
2)本成果である各設計シート(換気扇設計、送風機設計、陽圧換気設計)は、酪農試験場に申込み後配布する(MicrosoftExcel形式)。
【用語解説】
機械換気は牛舎内の空気を強制的に牛舎外に排気または給気するための換気扇と牛に向かって送風するための送風機を設置して換気する方式であり、陽圧換気は牛舎内にシートダクトを設置し、換気扇により取り入れた外気をシートダクトの穴から排出して換気する機械換気の一種である。
詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ 田辺智樹
電話 0153-72-2004 FAX 0153-73-5329
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