小豆を省力的に作るにはいくらかかるのか
道総研 十勝農業試験場 研究部 農業システムグループ
1.背景と目的
本道の小豆作付面積は減少傾向にあるが、作付けされている地域や畑作経営の規模により、多様な収穫体系が採用されている。そのため、収穫体系の違いにより豆の生産費に差が生じ、作付維持・拡大に向けた経済的な目標は異なる。収穫体系別の経済性を検討し、必要な収量水準や作付規模を示すことが必要である。そこで、小豆の作付維持・拡大に向けて、地域や作付規模を踏まえた収穫体系別の経済的な目標を明らかにする。
2.試験の方法
道内の小豆の作付け実態と作業体系から、調査対象地の小豆作付経営の作付面積や収穫体系を整理する。調査対象地において統計調査に準じた小豆生産費調査を行い、収穫体系別の投下郎党時間と生産費を明らかにする。計測した実績値を基に収穫体系別の経済性評価を行う。
3.成果の概要
1)十勝地域ではピックアップスレッシャによる収穫が多く採用されており、中でも菜豆作の多い中央周辺部では同収穫機の利用が多かった(データ略)。また、一部の市町村でコンバイン収穫が進んでいた。一方、オホーツク地域ではコンバイン収穫の比率が高かった。コンバインの利用は初期投資を要するため、コンバイン収穫の広がる市町村では小豆以外の豆類に利用する事例もあるとともに、JA 等による作業受委託や共同利用も見られた。
2)調査経営における小豆の投下労働時間は、4.07~5.52h/10a であり、かつての統計調査よりも短縮していた(表1)。刈取収穫に注目すると2畦豆用コンバインの労働時間はピックアップスレッシャよりも短かった。
3)10a 当たり生産費は74,357~87,126円であり、かつての統計調査と比較し、労働費は低減するものの農機具費、賃借料及び料金等が増加し、全算入生産費は増加していた(表2)。とりわけ2畦豆用コンバイン収穫体系では農機具費が増加することから、農機具の所有、利用のあり方が生産費により影響していた。
4)収穫体系ごとに負担面積に応じた収穫機に要する費用を試算し、収穫委託(委託料金11,550円/10a)と比較した(図1)。小豆作付2ha 未満では収穫機を個人所有するよりも収穫委託のほうが費用は低く、小豆作付2~5ha ではピックアップスレッシャのほうが費用は低かった。2畦豆用コンバイン収穫は小豆8ha以上であれば個人所有でも収穫委託より費用を抑制できるが、5~8ha では費用が収穫委託を上回った。このことから2畦豆用コンバインを導入しつつコストを抑制するには共同利用等により一定の負担面積を確保することが重要である。
5)収穫体系ごとに平年、低収年の60kg 当たり生産費を試算した(表3)。ピックアップスレッシャ体系では小豆3ha 以上で平年、低収年の双方で全算入生産費は販売単価を下回り、経済的な再生産が可能である。2畦豆用コンバイン体系はピックアップスレッシャ体系よりもコストは高いものの、平年作であれば小豆6ha 以上で全算入生産費を販売単価以下に抑制できた。一方、低収年を念頭に置くと小豆9ha 未満ではコスト割れが懸念され、低収年でも安定的に再生産を可能とするには小豆作付9ha が必要であった。小豆単独で2畦豆用コンバインを負担する場合には小豆の作付面積が13ha 程度必要であった(データ略)。コンバイン収穫を収穫委託と比較すると、委託によって小豆作付3ha、6ha で2,000~5,000円/60kg 程度生産費を低下させることが期待された。オホーツク地域は十勝地域よりも経営における小豆の作付面積が小さくコストが高くなりやすかった。
6)作況不良時にも経済的な再生産が可能な収量水準として、低収年を想定した試算ではピックアップスレッシャ(小豆3ha)188kg/10a、2畦豆用コンバイン(同9ha)192kg/10a、委託(同6ha)209kg/10aであった。
4.留意点
1)十勝及びオホーツク地域の畑作経営における小豆の作付維持・拡大に向けて収穫体系を選択する際に参考とする。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 農業システムグループ
電話(0155)62-9835
E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp