森豆腐店 60年歴史に幕 池田町民に愛された味
「ここが潮時、お客さんに感謝」
【池田】町内で戦前から営業していた森豆腐店(西1ノ3)が11日に店じまいし、惜しまれながら60年以上の歴史に幕を下ろした。近年は先代から引き継いだ2代目の森敏彦さん(83)と妻紀美子さん(79)、長男で3代目の賢幸さん(47)による親子経営で店を続けてきたが、「年齢的に体力の限界」とする森さん夫婦の意向で廃業に至った。
同店は森さんの父母である秀吉さん、ミヨ子さん夫婦が戦前に始めた。戦中は金物が軍に接収されて豆腐作りができなくなり、一時的に営業をやめたが、戦後に再開した。昔は、その日の朝に作った豆腐を、秀吉さんが犬にリヤカーを引かせて、町内で売っていた時期もあった。
その頃、森さんは、近所にある呉服店で事務の仕事をしていた。定年後に高齢の父母に代わって店を継いだ。幼い頃から父母らの姿を見て育ったので、豆腐作りにはすぐに慣れた。退職金で店を建て替え、豆腐作りに励んだ。15年ほど前には賢幸さんが店を継ぎ、森さん夫婦がサポート役に回った。
時代の変遷とともに町の人口はピーク時の1万7000人から現在は7000人を切るまで減り、同時に客足が遠のき、次第に店の経営も苦しくなっていった。町内に4、5軒あった他の豆腐店が次々廃業する中、森豆腐店は最後まで残った。
森さん夫婦は「最近は2人の年金を充てなければ経営が成り立たなかった」と振り返る。
3代目の賢幸さんは今年6月から別の職場で働き始め、店は森さん夫婦が閉めた。11日に予約注文があった油揚げを売り、原料の大豆が全部なくなった。
森さんは「このあたりが潮時。これまで支えてくれたお客さんに心から感謝したい」と話している。(内形勝也)