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自給飼料の生産、利用に関する技術展望 ~道内および北欧の事例調査を通じて~

道総研 上川農業試験場 天北支場 地域技術グループ

1.自給飼料の高栄養化をめぐる道内の現状
1)牧草サイレージ
・自給飼料の核となる牧草サイレージはなるべく高栄養価であることが望ましいが、それ以上に、質的に一定であることが求められる。均質なサイレージをまとまった量、得ようとすると、酪農経営全体の牧草サイレージは、「中低位平準」に落ち着きがちである。道内の平均的な草地更新率や草地の牧草割合が必ずしも高くないことも、その1つの表れと考えられる。
・ 高栄養化を図るためには、早刈り、多回刈り、アカクローバやアルファルファの混播などが有効であるが、いずれも1回の刈り取りあたりの収穫量が少ない、または番草間で成分変動が起きやすいことが問題となり、広く実践されているとはいいがたい。草地更新も有効であるが、更新率が十分に高くないとメリットが発揮されにくい。
2)飼料用とうもろこし
・2006年前後の濃厚飼料価格高騰をきっかけとして、全道各地で作付けが急増した。単収が多いことや、ふん尿の計画的な還元がしやすいこと、自給飼料を活用した飼料設計をしやすくなるなど、複数のメリットがある。
・近年は、雌穂中心の栽培・利用技術が広がってきており、道央南では子実主体利用も行われるようになっている。
3)その他飼料作物
・飼料用麦類(秋播きライ麦、春播き大麦・えん麦など)の栽培が行われている。栄養価は牧草に比べ高いとはいえないが、短期間に収量をあげることができることから、草地の輪作を容易にする作物として注目される。
・飼料用豆類その他新作物については栽培可能性を模索する動きはあるが、実規模での利用には収量性や雑草対策等の整理が必要である。
4)飼料調製の現状
・全道では、牧草サイレージは、大まかにいって40%がロールベール、40%がバンカーサイロ、さらに10%がスタックサイロで貯蔵されている(重量ベース、以下同様)。とうもろこし(ホールクロップ)は、約60%がバンカーサイロで貯蔵されている。とうもろこしの雌穂主体利用などの場面では、細断型ロールベーラやフレコンバッグが利用される。

2.北欧の飼料生産
1)デンマーク
・ 草地はペレニアルライグラス主体アカクローバ混播がほとんどで、アカクローバが消失する4年目を目途に更新される。草地は主に飼料用麦類と輪作され、飼料用豆類を栽培する例もみられる。総じて、タンパクの自給率向上を重視していることがうかがえる。
・飼料用麦類はホールクロップまたは子実利用されている。
2)スウェーデン北部
・ 草地はチモシー主体アカクローバ混播が多く、アカクローバが消失する4年目を目途に更新される。更新の合間には飼料用麦類が2,3年作付けされる。こちらでも、タンパクの自給率向上を重視していることがうかがえる。
・飼料用麦類は主に子実利用されている。

3.道内における自給飼料のさらなる高栄養化に向けて
1)草地輪作の推進
・ 道内の草地では、平均すると更新後5年程度で雑草率が牧草率を超えるとされている。方向性として、5年程度での更新やとうもろこしや飼料用麦類などと組み合わせた輪作が望まれる。
2)バンカーサイロの多層詰め技術の導入
・ 早刈り牧草や高マメ科率牧草、雌穂主体とうもろこし利用など1回あたりの収穫量が少ない原料をバンカーサイロで調製・利用するためには、サイロの多層利用が有効と考えられる。
・ 多層利用の主なメリットは、質や量が異なる複数のサイレージ原料を収穫・利用する場合でも、給与時に複数のサイロを開封せずに済むことである。これは除雪労力がかかる冬季に大きなメリットとなる。主なデメリットは、詰め終わるまでそのサイロを利用できないこと、追い詰めの回数だけそのサイロでサイレージ調製失敗のリスクが増大すること、追い詰め時には原料草をサイロ表面全体に拡散、踏圧する形となるため、重機オペレータの労力が増大する、などである。
・ 道内では、オーチャードグラス主体の採草地を年3回収穫し、それらをとうもろこしサイレージとともに2本のバンカーサイロに詰めている事例がある。導入の主な理由は、冬季間のサイロ開封労力の低減である。

4.まとめ
・道内の現状の自給飼料品質は、概して「中低位平準」となりがちである。
・ 北欧では、短期間での輪作が行われ、草地の植生は良好である。道内でも、短期更新(輪作)が行われることが理想的である。
・ 高栄養化された自給飼料は概して収穫量が少ないため、それらのサイレージ調製利用方法の検討も必要である。バンカーサイロの多層利用はその候補の1つである。



詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研上川農業試験場天北支場 地域技術グループ 林 拓
電話(01634)2-2111 FAX(01634)2-4686
E-mail:hayashi-taku@hro.or.jp

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