台風10号1年「あの日あなたは」 被災地住民アンケート
あの日あなたは…
十勝毎日新聞社が、昨年の台風10号災害で被害が大きかった清水、新得、芽室と帯広の計300人に行った当時の避難行動を探るアンケートでは、避難勧告・指示が出ても避難しなかった人の大半が「身の危険を感じなかった」ことを理由に挙げた。住民の生命財産に危険が及ぶと判断されて発せられる行政の勧告・指示が、住民の行動に直接結び付いていない現実があぶり出された。
避難勧告・指示が「出た」と回答した92人のうち、避難しなかったのは71・8%。理由について、「身の危険を感じなかった」との回答が最多の57・6%に上り、9・1%は「避難勧告・指示が出たのを知らなかった」と回答した。
この他は、避難しない方が安全と判断したとの内容が中心の「その他」と回答し、「身動きしない方が安全と思った」(新得、50代男性)、「道路の両側に水がたまり、避難した方が危険と思った」(新得、70歳以上女性)、「避難場所の方が危険だった」(帯広、60代男性)との声が散見された。
一方、避難意思はあっても実際に行動に移さなかった、またはできなかった人も。「ペットがいた」(新得、60代女性)、「搾乳があった」(新得、40代男性)、「雨がひどくて外に出られなかった」(帯広、60代男性)、「年寄りなので避難できなかった」(清水、70歳以上女性)などを理由に挙げた。
これに対し、当時避難所に身を寄せたのは31人で、避難行動をとった理由は、「避難勧告・指示が出たから」51・6%、「身の危険を感じたから」25・8%、「周囲の勧めがあったから」9・6%などの順。避難勧告・指示が出ていなくても避難した人も5人いた。
また、避難しなかった人の中には、自宅に何らかの被害を受けた人もおり、今回の台風災害を踏まえ、「(今後は)勧告・指示が出たら避難する」(新得、60代女性)、「日頃から水を用意する」(清水、40代女性)、「今まで(災害は)人ごとだったが、今後は過信しない」(新得、70歳以上女性)との声もあった。(杉原尚勝)
高まる防災意識
災害当時、避難勧告・指示を経験した人は防災意識が高い−。自宅での防災グッズの用意状況や地域の水害避難所の認知度を探る質問項目では、こんな結果も得られた。 当時、避難勧告・指示が「出た」と回答した92人のうち、現在、防災グッズを「用意している」のは59.8%と半数以上になったが、避難勧告・指示が「出なかった」「分からない」と回答した208人のうち、「用意している」は47.6%にとどまった。 また、当時、避難行動をとった31人のうち、「用意している」のは58.1%。これに対し、避難しなかった269人のうち「用意している」のは50.6%だった。 地域の水害避難所の場所を今も知らない人の割合は、避難勧告・指示が「出た」人では3.3%だったが、「出なかった」「分からない」では19.7%に達した。また、同様に、当時避難した人では3.2%だったが、避難しなかった人では16%。避難勧告・指示や実際の避難を経験した人の方が、防災グッズの用意や水害避難所の認知度が高くなった。
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