近赤外測定装置による牛枝肉オレイン酸含量の推定 および道内黒毛和種における実態
道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ
1.試験のねらい
十勝枝肉市場において牛枝肉オレイン酸含量を迅速・非破壊的に測定する近赤外測定装置の検量線を作成する。さらに本装置で測定した道内黒毛和種における牛枝肉オレイン酸含量の実態を明らかにするとともに、オレイン酸含量の遺伝的パラメータを推定し、遺伝的改良の考え方を示す。
2.試験の方法
1 )十勝枝肉市場に出荷された肥育牛の枝肉筋間脂肪から採取したサンプルを用いて近赤外測定装置の検量線を作成する。
2 )別の肥育牛のサンプルを用いて検量線の推定精度の評価を行う。検量線の推定精度は、近赤外測定値とガスクロマトグラフィー(GC)分析値の相関が0.8以上、平均二乗誤差が2.4%以下を目標とした。
3 )1)で作成した検量線を用い、近赤外測定装置により測定したオレイン酸含量の遺伝的な分析を行い、道内黒毛和種における牛枝肉オレイン酸含量の実態を明らかにするとともに、このオレイン酸含量の遺伝的パラメータを推定する。
3.成果の概要
1 )十勝枝肉市場において近赤外測定装置により牛枝肉オレイン酸含量を推定する検量線を作成した。作成した検量線の精度を検証したところ、近赤外測定値とGC分析値の相関は0.800、平均二乗誤差は2.35%であり、目標を達成した。本検量線を用い、十勝枝肉市場において近赤外測定装置による枝肉脂肪中のオレイン酸含量の測定が可能であると考えられた。
2 )道内黒毛和種における牛枝肉オレイン酸含量の平均は、去勢55.6%、メス57.4%、全体56.2%であり、他県の牛肉ブランドにおいて認定の指標となっている55%を超える高水準であった。このオレイン酸含量の遺伝率は0.55であり、他の枝肉形質よりも高い値であった。また、このオレイン酸含量と皮下脂肪厚には正の遺伝相関が推定された。
3 )以上のことから、オレイン酸含量は、遺伝的改良が可能であるが、改良に際しては慎重に扱うべき形質であると考えられた。
4.留意点
特になし
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道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ 大井 幹記
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