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大樹に国内唯一「気球実験場」 広さ、気象が好環境 宇宙航空研 岩手の観測所閉鎖で移転

科学観測気球の国内唯一の実験場、三陸大気球観測所(岩手県大船渡市)が来年三月で閉鎖され、大樹町の航空公園に移転する。宇宙航空研究開発機構が二十九日までに決めた。同観測所では二○○二年五月、気球の世界最高高度の五十三キロを達成しており、今年五月ごろに記録更新に挑戦した後、三十七年間の歴史に幕を下ろす。

日本独自の技術で極薄の樹脂フィルムを張り合わせた大型気球は、ロケットに比べてコストが大幅に安く、観測を長期間続けられる。環境が良い航空公園への移転で、宇宙機構のほか、大学や研究機関による実験回数が増えれば、大気の微量成分などの測定を通じ、地球温暖化の解明や予測を目指す研究が進むと期待される。
気球は宇宙線の観測や自由落下状態を利用した無重力実験にも利用されている。
移転するのは、気球が大型化し、ヘリウムガスを詰めて揚げる前に、細長く伸ばして置くスペースが足りなくなったため。また、気球は陸から海に風が吹く早朝に揚げ、海上に落下させて船で回収するが、同観測所の近くに民家が増え、観測機器の落下防止対策が難しくなっていた。
航空公園は広い上、飛行船用に建設した大格納庫もあり、揚げる直前の突風を避けられる。
宇宙機構の山上隆正教授は「職人芸でなくても気球を揚げられる方法を考えてきたが、夢がかなう。気球には絵を描くこともできるので、子供たちの教育にも活用してほしい」と話している。

【大樹】三陸大気球観測所移転の一報を受け、大樹町では「宇宙のまち・大樹のイメージアップにつながる」など関係者に喜びが広がった。
伏見悦夫町長は「二十数年間取り組んできた成果。夢が1つ実現し、感激している。世界最先端の研究・開発が行われることは、航空宇宙産業基地を目指す大樹町のまちづくりにインパクトを与え、活気を呼ぶはず」と歓迎する。
小・中・高校生を対象に「スペースイラストコンテスト」を毎年行っている町スペース研究会の酒森清会長も「宇宙が身近になる。研究者との交流が盛んになり、子供たちには単なる夢物語でなく“現実的”な夢を持たせるだろう。教育面でもいい影響を及ぼす」と期待する。
町総務企画課によると、移転に向け新年度は施設整備の工事などが行われ、本格的な実験は08年度から。実験は年2回実施、それぞれ40−50人が4、5週間ほど滞在するとされ、町経済への波及効果も期待される。
町商工会の奥田眞行会長は「恒常的に実験を行うことは、安定した経済活動が見込まれて喜ばしい。飲食店や宿泊業、小売店などを中心に元気が出るだろう」と歓迎。昨年11月末に町内にオープンした「HOTELTAIKI(ホテル・タイキ)」の村上京平支配人も「現在も多目的航空公園の利用客は多いが、さらに宿泊客が増える可能性が高い」と期待している。
障害物のない広大な敷地と良好な気象状況を背景に、町が航空宇宙基地構想に取り組み始めたのは1985年。95年に多目的航空公園を開設、98年には延長1キロの滑走路を舗装化、昨年度は14件の実験が行われた。
(北雅貴)

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