離着陸時はヘリ→水平飛行は飛行機 無人VTOL機実験 JAXA、大樹航空公園で
【大樹】独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、町多目的航空公園で垂直離着陸(VTOL)無人航空機の実験に取り組んでいる。同航空機は固定翼機とヘリコプターの短所を補うもので、昨年、静岡県内で飛行試験を行ったばかり。大樹では小型の機体で基礎データの取得に努める。23日午後には屋外で上空に飛ばし、機体の動作確認を繰り返した。
JAXAは数年前から同航空機の開発に着手。4枚の翼にそれぞれプロペラを取り付け、離着陸時はプロペラが上向き、上昇中や上空では翼の角度を変えて飛行する。固定翼機は広い滑走路や離着陸エリアの確保が必要で、ヘリコプターは長距離や高速飛行性能が足りない。それぞれの短所を克服した航空機として期待される。
今回の機体は、木製で長さ1・4メートル、横幅1・4メートル、重量約4キログラムの小型ラジコン機。JAXAスタッフ5人が22日から準備に入り、26日まで実験を繰り返している。地上でパイロットがコントローラで操縦、機体に搭載したGPS(全地球測位システム)や加速度計などの計測装置の機能を確認するほか、短時間の自動制御飛行も試みる。
23日は機器を搭載せず、機体をコントロールできるかをチェック。高度50メートルを約10分間、飛行した。JAXA飛行技術研究センター先進無人機セクションの村岡浩治リーダーは「技術を蓄積し、数年後には1000キロの長距離飛行を可能にしたい。動植物の生態などの環境計測や魚群探知、科学観測や災害監視などに活用できれば」と話している。
今後も大樹で実験を継続し、次回は10月を予定している。JAXAによると、同航空機の研究は国内では民間1社のみが進め、国外での開発も「聞いたことがない」(村岡リーダー)という。(北雅貴)