「きょうの料理」届け30年 浦幌出身でNHKの矢内さん担当 最長放送ギネス認定
1957年に始まり、テレビ料理番組の最長放送として「ギネス世界記録」に認定されたNHK「きょうの料理」。家庭料理の魅力を伝える番組を30年以上担当するのが、浦幌町出身でNHKエデュケーショナルのチーフ・プロデューサー矢内真由美さん(61)だ。矢内さんは「生活に寄り添うことを心掛けてきた。これからも手作りの良さやおいしさを伝え、100年継続を目指したい」と話す。(池谷智仁)
57年に放送開始 ギネス記録認定
番組放送開始は57年11月4日。2022年11月にギネス世界記録に登録され、23年10月に認定証が贈られた。認定時の放送回数は約1万5500回、紹介レシピは約4万6600に上る。現在はNHK総合とEテレで週3回、新作料理を紹介している。
毎日の献立に役立つ家庭料理を紹介する番組は、家族構成や社会の変化を反映したレシピを提供してきた。栄養不足が課題だったことから、初回放送は「栄養とは何か」を解説する内容で、翌日に紹介した最初のレシピは「カキのカレーライス」だった。1950年代の憧れの洋食から始まり、減塩、時短、作り置き冷凍術など時代ごとに工夫を凝らしてきた。
長い歴史の中で大きく変わったのはレシピの分量表記。当初は5人分だったが、65年に4人分、2009年からは2人分となった。時代に合わせ柔軟に対応する一方、「全国どこでも手に入りやすい調味料や食材を使う」「レシピを何度も確認する」などのルールは受け継がれてきた。
矢内さんは浦幌小、浦幌中、帯広柏葉高、北星学園大卒。帯広シティーケーブル(OCTV)勤務後、1992年にNHKエデュケーショナル入社。以来、「きょうの料理」を担当している。
主役は料理でも物語にこだわり
矢内さんがこだわるのは、料理や紹介する講師が持つ物語性。例えば腸活レシピを取り上げる場合、講師が日頃から実践し効果を感じていることが重要とする。「説得力やリアリティー、物語や理由があるレシピは伝わりやすい」からだ。
主役は料理だが、多彩な講師陣の姿勢や言葉に感銘を受けてきた。特に印象に残っている言葉は、料理研究家辰巳芳子さんの「平凡を重ねると非凡になる」。料理は下ごしらえなどの積み重ねが大切で、手抜きは味に影響することを意味する。矢内さんは「人生と重ね合わせることができ、救いになる言葉だった。食には深いテーマがある」と力を込める。
100年目指し「学びをやめず」
昨年12月におせち料理を取り上げると、意外にも男性視聴者の反応が良かった。NHK内では食のスペシャリストとして知られ、料理を扱う他番組やドラマ担当者からの問い合わせは多い。「今後は男性を意識した料理を積極的に展開したい。学ぶことをやめず、情報をアップデートしていきたい」と意欲を語る。