ナガマツ命懸け、パリ五輪出場へ正念場 バドミントン女子複【先読み新年号】
7月に開幕するパリ五輪出場に向け、十勝出身選手が士気を高めている。バドミントンでは女子ダブルスの永原和可那(北都銀行、青森山田高-芽室中出)と松本麻佑(北都銀行、札幌市出身)のペアが、激しい代表選考レースの真っ只中だ。唯一無二の大舞台に向け、最終盤まで力を注ぐ。
4月末までポイントランク争い
パリへの険しい道を駆ける永原和可那は、その心境を明かす。「前回の五輪レースもすごくつらかった。過酷な1年で、ものすごい戦いになることは分かっていた。『出たいな』くらいの気持ちでは臨めない」
3組が日本代表の2枠を巡って激しく競り合う。永原と松本麻佑のペアは昨年12月19日時点で、世界ランキング9位。松山奈未・志田千陽組(再春館製薬所)が同4位、福島由紀・廣田彩花組(丸杉)が同5位とする。
「引退しても忘れない。一生忘れない」と語気を強めるほど、あの瞬間は夢にも出て、今も永原を苦しめる。フクヒロに続き、世界ランク2位として臨んだ2021年の東京五輪。決勝トーナメント1回戦で、韓国ペアに第3ゲームのジュースの末に競り負けた。最終ゲームは26-28とされ、「なんであの1点を取れなかったのか。切羽詰まった状態で、できなかったことも自分たちの力と思いながらも、ずっと悔しい」と、この五輪レースに永原は気持ちをぶつける。
パリに向けては、前回以上に状況は厳しい。国内での競り合いに加え、世界ランキングの上位3ペアを中国と韓国が独占している。日本代表合宿で、コーチ陣は「非常事態」と、日本女子複の現状への危機感をあらわにした。
選考レースの一つだった熊本マスターズ(昨年11月)では、熊本にゆかりがあるフクヒロ、シダマツが相次いで初戦敗退。涙して悔しがるなど五輪への道の険しさを示した。同大会まで、3大会連続で4強としていたナガマツは現状打破を模索。あと一歩で決勝進出は逃したものの、新たに取り組んだ低空戦に手応えを得た。
11月後半の中国マスターズでナガマツは8強どまり。シダマツは世界ランク2位の白荷娜(ペク・ハナ)/李紹希(イ・ソヒ)=韓国=、フクヒロが同1位の陳清晨(チェン・チンチェン)/賈一凡(ジャ・イーファン)=中国=をそれぞれ撃破し、決勝ではシダマツがフクヒロにストレート勝ちするなど、パリへの争いは一進一退だ。
熾烈(しれつ)な戦いの中、ナガマツは、23年最後の大会となるワールドツアーファイナルズへの切符をつかんだ。五輪や世界選手権に次ぐ上から2番目の格付けの大会は、得られるポイントも大きい。それまでのワールドツアーでの成績から国内2ペアの出場に限られ、ナガマツとシダマツが臨んだ。
パリ五輪出場が懸かるランキングは12月19日現在、シダマツが3位、フクヒロが5位、そしてナガマツは6位だ。永原は「精神的に苦しさが続いている。他のペアがいるから自分たちも負けられないと頑張れている」。再びあの舞台へ、この道を走り抜ける覚悟はできている。(新井拓海)
■日本A代表 今後の大会
(1)マレーシアオープン(スーパー1000、1月4~14日)
(2)インドオープン(スーパー750、1月15~22日)
(3)アジア混合団体選手権(2月10~19日)
(4)フランスオープン(スーパー750、3月2~10日)
(5)全英オープン(スーパー1000、3月11~19日)
■ナガマツパリ五輪への道
ダブルスの出場枠は男女それぞれ16組。2023年5月から24年4月末までの国際大会の成績を対象としたポイントランキングで決まる。1~8位に日本勢2組以上が入っていれば2組、入っていなければ1組が出場権を得る。大会のグレードが高いほど、多くのポイントを獲得することができる。世界ランキングは、このランキングとは別で、過去1年間の上位10大会の成績を対象にしている。
■パリ五輪選考レース2023年成績(12月17日現在)
・スディルマンカップ(グレード1、5月14~21日・中国)グループリーグ第1試合出場(団体戦)
・マレーシアマスターズ(スーパー500、5月23~28日)ベスト4
・シンガポールオープン(スーパー750、6月6~11日)ベスト8
・インドネシアオープン(スーパー1000、6月13~18日)ベスト4
・カナダオープン(スーパー500、7月4~9日)準優勝
・韓国オープン(スーパー500、7月18~23日)ベスト4
・ジャパンオープン(スーパー750、7月25~30日)ベスト4
・オーストラリアオープン(スーパー500、8月1~6日)ベスト8
・世界選手権(グレード1、8月21~27日・デンマーク)3回戦
・中国オープン(スーパー1000、9月5~10日)ベスト8
・香港オープン(スーパー500、9月12~17日)ベスト8
・アークティックオープン(スーパー500、10月10~15日・フィンランド)ベスト4
・デンマークオープン(スーパー750、10月17~23日)ベスト4
・フランスオープン(スーパー750、10月24~29日)ベスト4
・熊本マスターズジャパン(スーパー500、11月14~19日)ベスト4
・中国マスターズ(スーパー750、11月21~26日)ベスト8
・ワールドツアーファイナルズ(スーパー1000、12月13~17日)GL敗退
※GLはグループリーグ。スーパーのあとの数字は大会の格付け。数字が大きいほど、成績による獲得ポイントが大きい。
<ながはら・わかな>
1996年1月芽室町生まれ。小学2年から競技を始め、小学時から全国大会を経験。芽室中から進んだ青森山田高では3年時に全国高校総体の団体戦、個人戦ダブルスで優勝した。北都銀行(秋田県)に入行し、2016年に日本B代表入り、18年から日本A代表。松本麻佑とのペアで18、19年に世界選手権、19年に全日本総合選手権、21年全英オープンを制覇。同年の東京五輪に出場した。
<まつもと・まゆ>
1995年札幌市生まれ。とわの森三愛高から北都銀行。