「藤丸店」顧客取り込め 系列店は試行錯誤 閉店から2カ月
道内で唯一、地場資本の百貨店だった藤丸(帯広市)の閉店からまもなく2カ月。藤丸のテナントは撤退や移転などの選択を迫られた。管内に本店や系列店があったテナントは、藤丸店の代替店舗を出店せず、体制を縮小する事業者も多く、藤丸店の客を既存店に取り込むため、機能の拡充や商品ラインアップの再編など工夫を凝らしている。
本店機能強化、売り上げ増も
旧藤丸テナントで構成していたふじまるビル商店会の全10店のうち、4店が移転。現時点で既存店に集約した5店のうち、4店が地元資本の事業者。
売り場面積や商品拡充
帯広の老舗茶店「河野園」では、藤丸店を撤退した後、市内中心部にある本店(西3南8)を改装し、3月から販売機能を強化した。藤丸店で使っていた棚や冷蔵庫などの什器(じゅうき)を活用し、売り場の棚面積を2割ほど拡大。高価格帯の茶葉や茶菓子などの取り扱いを本店で増やしたほか、新たにお茶のテークアウトも始めた。柳澤一秀社長は「いずれも藤丸店で展開してきた。少しでも藤丸時代のお客さんを取り込みたい」と意気込む。
また同時に、藤丸店で昨年から販売し人気だった「お茶のプリン」の製造体制も拡充した。新たに和紅茶(日本産紅茶)味を開発し3種類になり、以前からの委託製造に加え、本店内に調理スペースを設け、一部、自社製造も始めた。
柳澤社長は「藤丸店閉店で人員に少し余裕ができた。藤丸時代の客はまだ1日に数組ほどしか戻っていないが、徐々に増えている実感がある。今後はいかに本店に来てもらえるかがカギ。他店と連携なども考えていきたい」と話し、ギフト品の取り扱いなどの準備を進める考えだ。
限定そばをメニューに
藤丸内の「そば処一ぷく」は、同経営の「そば処一休」(長崎屋帯広店)に統合。両店の運営会社社長の佐藤博氏(76)は、藤丸限定で人気メニューだった「よもぎそば」を一休のメニューに加えた。
ヨモギの葉を更科(さらしな)粉の生地に練り込むよもぎそばは「のどごしの良さと香り」(佐藤社長)が特徴。一般のメニューにプラス100円でよもぎそばに切り替えることができ、藤丸では2割ほどの客が選択していた。
「一休」では藤丸閉店前より2~3割ほど売り上げがアップしており、よもぎそばも1割ほどの客が注文する。佐藤社長は「藤丸の客も1日に10人前後来てくれている。味を磨き続け、新たなよもぎそばのファンを獲得したい」と語る。
取り扱いブランド継承
眼鏡販売の水晶堂も藤丸店の閉店後、藤丸南向かいの本店(西3南9)で客の呼び込みを狙う。藤丸店でのみ販売していたグッチやティファニーなどブランド眼鏡の本店での取り扱いをスタートさせた。「藤丸店で閉店セールを行ったこともあり、まだ藤丸店の客は少ない」(同店)としながらも、買い替え時期などでの取り込みを狙っている。(吉原慧)