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戦争で散った人の思いを- 十勝三菱の鈴木さん脚本映画がグランプリ 函館港映画祭

鈴木享さん

 【函館】函館港イルミナシオン映画祭・第26回シナリオ大賞(実行委主催)で、帯広市の鈴木享さん(80)=十勝三菱自動車販売社長=の作品「昭和九十七年 夏」がグランプリの函館市長賞に選ばれた。鈴木さんにとって、近年の創作の原動力ともなっていたコンクールでの受賞に、「まだまだ書き続けようという勇気をいただき、背中を押される思い」と喜んでいる。

 同シナリオ大賞は、函館をテーマに映像化を想定した作品を、プロ・アマ問わず公募するコンクールで、今年は57作品の応募があった。作家の荒俣宏氏らが審査員を務めた。

 鈴木さんの作品は、太平洋戦争を生き抜いた主人公と、現代の函館港に戻ってきた戦友の英霊との語らいや、主人公の家族の姿を通じて、日本の「いま」を問う物語。

 鈴木さんは「戦争で命を散らした人たちが後世に懸けた切ない願いや、日本の復興に骨を折った世代のことを、今を生きるわれわれが心の片隅にでもとどめておく必要があるのではないか」と、作品に込めた思いを語る。

 鈴木さんは1942年浦幌町生まれ。東京で過ごしていた大学生時代、黒澤明監督の「用心棒」を見た直後に立ち寄った書店で、偶然映画の脚本を手にしたことがシナリオを書くようになったきっかけ。「若気の至りで、自分でも書けそうな気がした」と笑う。

 以来、仕事の傍ら創作を続け、74年の第16回シナリオ作家協会新人育成会コンクールで準佳作、92年には帯広市民文芸賞を受賞した。

 社業が多忙で一時執筆から離れていたが、10年ほど前に同映画祭のホームページを目にしたことで再びペンを取るようになった。「ボランティア主体に運営する映画祭で、映画に対する熱い思いが伝わってきて、心に火が付いた」という。

 応募しては落選を繰り返したが、2020年に1次審査を通過。今回、6度目の挑戦でグランプリ獲得となった。

 「憧れのコンクールで受賞できてうれしい」と喜びを語り、「シナリオを書くことはもう習い性のようなもの。ネタはたくさんあるので、形にするのは大変だが書き続けていきたい」と意欲を新たにしている。(丹羽恭太)

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