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岡本太郎現代芸術賞 特別賞に中札内の彫刻家藤原千也さん

藤原さんの特別賞受賞作「太陽のふね-mother’s boat」。川崎市の岡本太郎美術館で展示されている

 【中札内】若手芸術家の登竜門「第23回岡本太郎現代芸術賞」で、中札内村の彫刻家藤原千也さん(41)=中札内高等養護学校教諭=が特別賞に選ばれた。受賞作は樹齢100年以上というバッコヤナギの巨木を素材に、出合いから2年以上かけて制作した「太陽のふね-mother’s boat」。藤原さんは「受賞はうれしいが、もっと木の中にある魂と話がしたい」と話している。

 同芸術賞は公益財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団など主催。岡本太郎(1911~96年)が逝去した翌97年に「岡本太郎記念現代芸術大賞」として始まった。

 今回は応募用紙による第1次審査で452点から入選者23作家を決定。その中から岡本太郎賞(1作家)、岡本敏子賞(同)、特別賞(5作家)が選ばれた。

特別賞の盾を手にする藤原さん

 札幌市出身の藤原さんは巨木を使った彫刻作品で知られ、現在は村内の古い鉄工所を改造したアトリエで制作活動に取り組む。“木との対話”を大切にする藤原さんは、今回の素材に樹齢100年以上のバッコヤナギを選んだ。

 この素材を入手したのは2017年11月だったが、木の“声”が聞こえない日々が1年以上続く。「木の中に入れば魂と出合えるかもしれない」と思い、とにかく木をくり抜いた。

 彫り進めている途中、乾湿の差で木が割れ、一筋の光が上部の割れ目から差し込んだとき、「舟のようだ」と感じたことで制作は佳境に入った。

 作品は長さ5・6メートル、直径1・5メートル。自身の制作の中で最大規模の作品が完成した。

 審査員の1人で美術批評家の椹木野衣さん(多摩美術大学教授)は「一条の太陽の光が差し込んだとき、この死んだ巨木は一つの表現になった。象徴的に死から生への転換が起きたのだ。その簡明さがこの上なく力強い」と評価した。

 藤原さんは「最高賞(岡本太郎賞)を目指していただけに悔しい」とも。「もっと大きな木を彫りたい。木が感じてきた太陽や歴史を自分も感じてみたい」と話している。

 藤原さんを含む入選作家の作品は4月12日まで、川崎市の岡本太郎美術館で展示されている。表彰式は今月13日に同美術館で開かれた。(細谷敦生)

関連写真

  • 巨木と向き合う藤原さん(2019年12月)

    巨木と向き合う藤原さん(2019年12月)

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