帯広市内に無人古書店オープン 新書や小説など450冊
帯広市内に無人古書店「馬酔本(うま、ほんによう)」(西2南19)が開店した。十勝管内ではまれな個人による実店舗の古書店開業。無人化は人件費を掛けずに持続可能な店づくりを実現するため採用したシステムで、全国でも例が少ないという。
古書店を開いたのは、同住所で学習塾「学理舎」を経営する平野雄士さん(44)。東京出身で大学時代を札幌で過ごし、2010年に帯広へ。15年から現在の建物を借り、2階で学習塾を開いた。これまでに延べ約150人の教え子を送り出してきた。
塾の子どもたちの興味を受け止める本棚を作りたいと、私物の書籍などを並べ始めた。近所に古書店がなく、子どもが本と出合える場所を本格的に作りたいと思うようになった。
建物1階の車庫を有効活用し、古書店を開業しようと一念発起。古物商の許可申請も行い、自ら店主となり8月8日にオープンさせた。自身の蔵書を軸に、知人からの寄贈本などをもとに新書や小説など約450冊を並べた。
古書販売はもうけが少ない商売とされる中、本業の塾の運営と両立させる方法を考えた。人件費を削るため、都内の古書店で採られている方式を参考に、無人の店内にガチャガチャを置き、本の値段分の小銭を入れてレバーを回すと持ち帰り用の紙袋が出てくる仕組みにした。精算を簡潔化するため、本は値段が200~600円のみのラインナップに絞った。
平野さんは「まだまだ本棚は未完成。地域に根差し、買い取りを通じて深みのある棚を作りたい」と話す。既に買い取りも始めており、今後は棚の充実化を図る。営業時間は目安で午前10時~午後8時。
帯広警察署管内の9市町村では、古物商の申請のうち書籍販売を主とするのは56件。ただ、営業実態のない届け出も少なからず含まれているとみられ、「事業者の営業はあるが、個人で新規の古書店開業は珍しいのでは」(同署)としている。(本田龍之介)