ばんえいに荒井医師着任 2人体制で競馬発展を下支え
帯広市のばんえい競馬場内で5月、獣医師の荒井久夫さん(58)がばん馬の診療所「十勝ばんえいクリニック」を開業した。競馬場の獣医師は約550頭のばん馬の健康を管理し、レース開催を下支えする重要な存在。今月からは山本哲也獣医師(59)も加わって2人体制となり、「みんなで協力し、ばんえいを発展させたい」と願っている。
競馬場内の診療所は個人の開業。前任の獣医師が3月末で診療所を閉鎖し、競馬開催には獣医師が不可欠なため、市と馬主協会が後任者を探していた。
荒井さんは宇都宮市出身で、酪農学園大(江別市)を卒業後、獣医師として旧網走市農業共済組合に勤務。4月まで、合併したオホーツク農業共済組合で診療担当次長を務めたが、退職して開業を決めた。
「もともと馬が好きだから。定年まで2年でいい機会だった」と荒井さん。オホーツク管内にもばん馬の生産者や馬主は多く、「ばんえいに行くと聞いて、皆さんが『助かる』と応援してくれた。十勝の知り合いに宣伝もしてくれ、ありがたかった」と話す。
診療所は約550頭のばん馬と人が暮らす厩舎(きゅうしゃ)地区内にある。足や歯の病気から風邪、疲労回復まで、多い日は1日15頭ほどが次々と診察や治療に訪れ、「まるで野戦病院のよう」(荒井さん)。24時間体制のハードな業務だが、「好きなことをやっているから」と日々を楽しんでいる。
4日に元十勝農業共済組合獣医師の山本さん(富良野市出身)が着任、週3日勤務で荒井さんをサポートしている。初任地が足寄で多くの馬を診たという山本さんも「市主催の競馬の馬を守る仕事で、生きがいを感じる」と語る。
診療所は1次診療を担当する「町医者」で、手術ができる2次診療機関の協力が欠かせない。今秋にも最新の動物臨床棟が完成する帯広畜産大学と連携していく方針で、荒井さんは「診療所を学生や教員の実習の場に活用し、良い関係を築きたい」と考えている。10月には、米国のオハイオ州立大で馬を勉強中の20代の女性獣医師も診療所に赴任する予定という。
オホーツクでは映画「子ぎつねヘレン」の制作に関わるなど幅広く活動した荒井さん。新たなフィールドで「馬と生活する人々の真剣さに応えられる仕事をしたい。市民にももっとアピールし、市と馬主、調教師、騎手など皆でばんえい発展を考えていきたい」と張り切っている。(小林祐己)
◆ばんえい競馬について
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