マメ科牧草との相性抜群! 栄養価も高いチモシー新品種「北見36号」
道総研 北見農業試験場 研究部 馬鈴しょ牧草グループ
ホクレン農業協同組合連合会 酪農畜産事業本部 畜産生産部
1.試験のねらい
チモシーは北海道の基幹草種であり、その栽培面積は道内草地面積の7割強にあたる約40万haと推定される。極早生~晩生までのラインナップの中で、現在早生の優良品種として普及している「なつちから」は収量性や混播適性等に優れる一方で、飼料成分においては改良の余地が残されていた。近年、輸入穀物価格をはじめとする生産コストが高止まりし、酪農生産現場では自給粗飼料の品質向上が強く求められている。そこで、早生に属し、収量性、マメ科牧草に対する混播適性および栄養価に優れる品種育成を目指した。
2.育成経過
2009年に152栄養系および152個体からなる基礎集団を造成し、選抜試験を開始した。既存の早生品種と比べ低消化性繊維(Ob)含量が低く、可溶性炭水化物(WSC)含量が高く、農業特性が概ね同程度な25栄養系を選抜し、2011年に隔離温室内で交配して900個体からなる基礎集団を造成した。2012年までの圃場調査結果とObおよびWSCの分析値から、15母系29栄養系を選抜し「北見36号」の構成親とした。2017年までの3年間、育成場所における生産力検定予備試験を、2021年から2023年にかけて地域適応性検定試験および各種特性検定試験を実施した。
3.特性の概要(標準品種「なつちから」との比較)
長所:1.混播適性に優れる。
2.Ob含量が低く、WSC含量が高く、栄養価に優れる。
短所:なし。
1)出穂始は1日早く(表1)、早生に属する。
2)3か年の合計乾物収量は、全場所平均で「なつちから」比101%と同程度である(表1)。また、年次別乾物収量は、全場所平均で同比101%といずれの年次においても同程度である。番草別乾物収量は、1、2番草は同程度で、3番草はやや多い。以上のことから、収量性は並である。
3)越冬性は並である(表1)。
4)斑点病罹病程度は同程度で(表1)、斑点病抵抗性は並である。すじ葉枯病罹病程度はやや低く(表1)、すじ葉枯病抵抗性はやや優れる。
5)地域適応性検定試験における1番草の倒伏程度は、「なつちから」よりやや高い(表1)。ただし、発生は軽微であった。耐倒伏性検定試験における1番草の倒伏程度は、同程度である(表1)。以上のことから、耐倒伏性は並からやや劣る。
6)混播適性は、優れる(表1、図1)。
7)採種性は、並である(表1)。
8)飼料成分は、1、2番草でOb含量が低く(図2)、全番草でWSC含量が高く(図2)、栄養価に優れる。
また、可消化養分総量(TDN)収量がやや多い(表1)。
9)草丈は、全番草で同程度である(表1)。
10)生育特性は、春化後の草姿がやや立型であり、第一葉の長さが3cm程度短い(表1)。
4.留意点
普及見込み地帯は北海道全域、普及見込み面積は60,000haである。年間2-3回の採草利用を主体とする。
詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研北見農業試験場 研究部 馬鈴しょ牧草グループ 飯田憲司
電話 0157-47-2633 FAX 0157-47-2774 E-mail iida-kenzi@hro.or.jp
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