消費者にYES ! clean 表示制度の魅力が伝わる説明文のコンセプト
道総研 中央農業試験場 農業システム部 農業システムグループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 農業システムグループ
１．背景と目的
北海道では、単位面積当たりの収量を維持しながら、持続的な農業の確立を目指すことを目標とし、化学肥料・化学合成農薬を平均３割削減するクリーン農業技術の開発を進めてきた。クリーン農業の優位性を示すためには、表示制度に対する注目や興味を集める情報発信のあり方が問われている。本試験では、一般消費者に対する調査により、YES ! clean 表示制度に対する消費者の理解促進に重要な情報を特定した。
２．試験の方法
１）YES ! clean マークにおける課題の明確化
マークの機能に対する一般消費者の評価を明らかにするとともに、選択型コンジョイント分析を行い、マークが食品の購買確率に与える影響を明らかにすることで、マークの課題を明確にした。
２）説明文に必要となるコンセプトの設定
マークに対するイメージと制度に関する説明文等の付加情報を閲覧した後に変化したイメージについて、消費者を対象にしたグループインタビュー（GI）で得られた発話を基に視覚的に整理した。
３）説明文に必要となるコンセプトの効果検証
複数の説明文案に対する消費者の選好をベストワーストスケーリング分析により相対評価した。また、自由記載欄に記されたキーワードの出現頻度や肯定的及び否定的な意見に固有なキーワードを明らかにした。
３．成果の概要
１）マークを見てYES ! clean の制度内容を理解できる消費者は、道産食品登録制度より少なく、正式表示よりも略式表示で少なかった。消費者はマークの制度内容について、略式表示では「わからない」と認識しているのに対し、正式表示では「化学肥料」や「農薬」等と認識していた。マークの表示により、生産地の理解や購買意欲の向上については一定の効果が認められた。マークを見て制度内容を理解できるとした消費者の評価はばらつきが大きく、制度内容の理解と購買意欲との関係は判然としなかった（図１）。以上から、マークの課題は消費者に制度内容が伝わりにくい点であり、これを補完するための説明文が必要とされる。
２）現状のYES ! clean 表示制度の説明文で魅力に感じる点としては、「厳しい」「基準」を「満たす」「農産物」の「証」であることが挙げられた。説明文の改善点としては、文章が長いため「一行」程度の短い文とする要望が挙げられた。特に、説明文に加えるべき点として、「認証」している主体や「メリット」を示すことが必要との意見が挙げられた（図２）。以上を踏まえ、説明文に必要となるコンセプトを、表１のとおり設定した。
３）－１ コンセプト（１）～（３）は、採用した文案の順位が採用しない文案よりも高く、消費者の選好を高める要素と判断された（表２）。なお、基準を満たした農産物の証を示すコンセプト（２）は、文案Ｄよりも化学肥料や農薬の基準であることを示す文案Ｃの順位が高いことから、基準の内容は具体的に示す必要があるといえる。
３）－２ 消費者のメリットに係るコンセプト（４）は、採用した文案Ａの順位が相対的に低く、標準偏差が最も高かった（表２）。関連する自由回答では、「自分が評価されている気分」や「押しつけがましい」等の相反する意見がみられた。このようなことから、コンセプト（４）は、必ずしも選好を高めるものではないといえる。
３）－３ 文案Ｂは年齢、環境意識、マークの表示方法を問わず、１位であった。ただし、マークの意味を知っている回答者は、現行文案Ｆの順位が最も高く、制度に関する情報量が多い説明文を好む傾向があった（表２）。このようなことから、コンセプトを活かした説明文で興味を集めた上で、詳細な情報発信を行うといった段階的な情報発信が効果的であると判断した。
４）YES ! clean 表示制度の魅力を効果的に伝えるには、50文字以内であること、厳しい栽培基準を満たした農産物の証であることを記すこと、化学肥料や農薬に関する基準であることを記すこと、基準を定めた機関を記すことといったコンセプトを踏まえた説明文等を作成していく必要がある。
４．留意点
本成果は北海道クリーン農業推進協議会において、YES ! clean 表示制度の説明文を作成する際に活用される。
詳しい内容については次にお問い合わせ下さい。
道総研中央農業試験場農業システムグループ
電話（0123）89-2001
E-mail：central-agri@hro.or.jp
