育種価評価から得られる数値を肥育管理改善にも役立てよう!
畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ
1.試験のねらい
普及センターやJAでは、枝肉成績により肥育農家の問題点を抽出し、肥育技術の改善を行っているが、枝肉成績には肥育農家の技術の他、肥育牛の遺伝的能力(育種価)も大きく影響しており、指摘した問題点が適切ではない場合がある。育種価評価の際に算出される「肥育地の効果」は、肥育農家の問題点を抽出するための指標として活用が期待されるが、実際の肥育管理法との関連の検証や情報提供体制は十分ではない。
そこで、育種価評価の際に算出される「肥育地の効果」を活用して肥育農家の問題点を客観的に抽出し、問題点に対する改善策の提示法を示す。
2.試験の方法
1 )「肥育地の効果」の算出に適した育種価評価モデルを検討する。(分析頭数215,261頭)
2 )「肥育地の効果」と肥育管理法の関連を解析し、「肥育地の効果」のランクに応じた肥育管理改善法および種雄牛の選択法を示す。(調査戸数42戸)
3 )肥育農家や指導組織に対する活用マニュアルとして、「肥育地の効果」による肥育改善チェックシートを作成する。
3.成果の概要
1 )枝肉6形質における全分散に占める肥育農家の分散割合は0.08~0.17であり、枝肉重量の「肥育地の効果」では、最大最小の農家間に約100kgの差があった。各肥育農家の「肥育地の効果」の値にはばらつきがあり、その大小を基に肥育管理改善に活用できると考えられた。
2 )同一肥育農家を出荷年次ごとに区分して異なる農家とした育種価評価モデルにより算出した「肥育地の効果」は、枝肉成績とは異なる年次推移を示し、「肥育地の効果」を活用することで肥育管理の現状をより正しく把握可能になると考えられた(図1)。
3 )枝肉重量の「肥育地の効果」に対しては、配合飼料の種類、敷料交換頻度、飲水施設の種類、飼養密度が有意に影響を与えていた(表1)。敷料交換頻度1週間以内の肥育農家は、他の農家より枝肉重量の「肥育地の効果」が約15kg高かった(表2)。脂肪交雑の「肥育地の効果」に対しては、配合飼料の種類、敷料の種類、飲水施設の種類、粗飼料細切の有無が有意に影響を与えていた(表1)。そのため、敷料交換頻度などの細かな肥育管理法の改善によっても成績向上が期待できると考えられた。
4 )「肥育地の効果」の高低に関わらず期待育種価の高い牛を肥育した場合は、良好な枝肉成績を示した。「肥育地の効果」が低い農家は、期待育種価の高い牛を肥育することによる成績改善幅は小さいため、遺伝的能力を十分に引き出すために肥育技術の向上が先決と考えられた。
5 )「肥育地の効果」を活用して、各肥育農家の道内における位置、肥育管理の問題点と改善策、弱点を補強するための種雄牛を把握できる肥育改善チェックシートを作成して”見える化”し、肥育改善チェックシートを活用した指導の流れを示した。
4.留意点
1 )肥育改善チェックシートを活用することで、肥育農家や指導組織は、より客観的に肥育管理上の問題点を抽出し、その問題点に応じた改善策を検討することが可能となる。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 家畜研究部 肉牛グループ 鹿島 聖志
電話(0156)64-0606 FAX(0156)64-6151
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