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この暗渠効いてるの?チェック方法と排水機能回復法

中央農試 生産研究部 水田農業グループ・農業環境部 環境保全グループ

1.背景と目的
 近年は暗渠排水機能の向上のため疎水材を有する暗渠が整備されているが、疎水材暗渠の機能が上手く働かず、期待した排水効果が得られない場合がある。そのため疎水材暗渠の機能低下要因を明らかにし、簡易な土壌調査による機能診断手法を取り入れることで、排水機能低下要因に対応した機能回復手法を確立する。

2.試験方法
1)疎水材暗渠整備圃場における排水機能低下要因の解明
   疎水材暗渠の施工後年数や疎水材の種類の異なる水田、畑において、排水機能の低下要因について検討する。供試圃場:疎水材暗渠整備済み圃場(水田31、畑41)、施工後年数3~24年、疎水材の種類:有機質資材はモミガラ、木材チップで、無機質資材は砂利、砕石、火山礫、火山灰、ホタテ貝殻。調査項目:地表面や排水路の状況観察、土壌断面調査、土壌物理性、疎水材の腐朽程度、現場透水性

2)簡易な土壌調査による排水機能診断手法の開発
   整備事業や農業指導に携わる職員でも対応可能な簡易な土壌調査による機能診断手法として、検土杖を用いた方法について検討する。試験項目等:検土杖で20cm 深さごとに採取した土壌の粘り、土性の判別、ジピリジル液による土壌還元の程度。専門家による土壌断面調査結果との照合。

3.成果の概要
1 )疎水材暗渠整備済み圃場における排水性の調査結果では、水田で65%、畑でも44%が排水不良である。また、水田、畑ともに排水性の良否と施工後年数、疎水材の種類との間には明瞭な関係がみられず、施工後年数以外の様々な要因が排水性の良否に影響しているものと思われる。

2 )施工後年数に伴う疎水材の変化として、透水性については細粒分が多い火山灰を除いていずれの資材も良好である。火山灰を疎水材として利用する際は粒度調整が必要となる。

3 )無機質疎水材では劣化や疎水材周辺の空洞化、崩落は認められない。また埋戻し土厚さが施工時より増加した圃場がみられるが、施工後年数との関係は判然としない。一方、有機質疎水材では施工後年数が経過した圃場で疎水材周辺の空洞化や崩落がみられ、C/Nの低下や土砂混入量、埋戻し土厚さの増加がみられる(図1)。本調査の中で暗渠管内の閉塞状況は認められない。

4 )疎水材量が不足している圃場は水田で36%、畑では66%であり、無機質疎水材に比べ有機質疎水材量の不足圃場の割合が高い(表1)。

5 )排水不良と判断された圃場では疎水材周辺の土壌物理性が不良であり、粗孔隙が少なく、余剰水の疎水材への移動を妨げている例が多い。水田では高地下水位であることと泥濘化や堅密層による浸透阻害が、畑では土壌の堅密化による浸透阻害が主たる排水機能の低下要因である。また、暗渠落口の水没や水閘の常時閉鎖など、維持管理不良が主要因となっている圃場も散見される(表2)。

6 )20cm 毎に採取する検土杖を用いた簡易な土壌調査の判定(土性、粘り、ジピリジル液による還元反応)は、専門家が行う土壌断面調査結果との整合性が高く、圃場の排水機能診断に活用可能である。

7 )以上の結果をもとに、暗渠整備済み圃場における排水不良要因と疎水材暗渠の機能診断手法、および疎水材暗渠の機能回復手法について示す(表3)。

4.成果の活用面と留意点
1 )本成果は圃場の排水不良要因の抽出と対策の策定、ならびに効率的・効果的な農業農村整備事業の推進に活用できる。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp


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