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年間キャンペーン第2部 まちの力 「発展の芽」番外編

自治体の生き残り戦略を考える、2007年の年間キャンペーン「まちの力」。第2部として4−13日の間に、十勝管内のキラリと光る自治体3町を取り上げ、「発展の芽−十勝で発掘」全6回を掲載した。担当記者5人で、取材を通じて感じた元気な自治体の共通点や課題など、“十勝発展のヒント”を話し合った。

/キーワードその1/人脈/
/「何はなくとも人のきずな」/
植木今回十勝で見つけた「発展の芽」は何か。
小林まず「人脈の力」だ。取り上げた3町とも、1つのことを成すのに必要な人脈を、担当レベルでしっかりとつくり上げていた。
松村大樹は、実験場誘致に失敗するなど幾度もの挫折を味わった。でも宇宙構想はだめかもと思うたびに、行政や町民が地道に築いた人間関係の中から救いの手が差し伸べられた。
小林元開発振興課長として現場にも携わっていた伏見悦夫町長の人脈が実を結んだ面もあるといえる。当時若手だった研究者が今、主要ポストに就いていることも大きい。
安田本別は「福祉自治体ユニット」という組織を通じ、先進的な自治体の職員や国の担当者と情報交換していた。だからモデル事業の情報もいち早く入手できた。もちろん情報を生かす町職員の感度のよさもあったが。
清水清水の少人数特区認定から通信制芸術高校誘致までは“横山人脈の不思議な縁”に尽きる。先輩後輩の関係だった高薄渡町長、芸術高誘致の舞台となった寿司店を経営する教え子…。人脈とタイミングの妙がきっかけをつくった。
植木実は特区の後押しには、十勝教育局の担当者の力も大きかったといっていた。財政難にあえぐ自治体が十勝にも多いが「何はなくとも人のきずな」。職員には将来への生きた投資をしてほしいね。
/キーワードその2/ぶれない信念/
/決めたらとことん現場の熱意とトップの心意気/
小林人脈と並んで、難局にぶち当たった関係者が信念を持ってぶれることなく可能性を信じ続けたことで、危機を脱するきっかけをつくった。
植木「ぶれない信念」も、3町の発展の芽を生んだ要因だ。清水の横山一男教育長は、38年間の教諭時代に抱いた少人数学級という夢を、町の教育行政のトップとなったことで実現させた。
清水現場経験者の言葉には説得力がある。それに横山教育長は「いつでも辞表を出す用意がある」といっていた。だから壁にぶつかっても“正面突破”できたと思う。
小林「大樹から大気圏外へ」は、冗談のようだが大まじめ。これを軸にまちづくりを進めたから、宇宙関係者は大樹に目を向けてくれた。今では国も大樹を見ている。
植木福祉は票に結び付くといわれ、選挙公約にも頻繁に組み込まれるが、表面だけで終わることも多い。でも本別は政策に魂を込めた感じがした。一方、教育は結果が出るまで時間がかかるため票にならないといわれるが、清水は学びの環境整備に進んだ。
清水大樹はまさに「雲をつかむような」事業。よく町民が後押ししてきたと思った。
松村人口が少ない自治体でも、熱意を持った人材がいれば、どこの市町村でも素材を活用できる。
安田現場の人間の熱意と、トップが将来への明確なビジョンを持つことが、まちづくりを成功させるために不可欠。現場の声をくみ取れる体制も重要で、首長や上司の資質が問われる。
/キーワードその3/地域の理解と協力/
/「町民としての誇り」住民に意識変化/
安田ぶれない信念は、結果として地域を動かす力になった。
植木まさに「念ずれば通ず」だ。
松村自家製牛乳を研究員に配る酪農家の姿など、町民の熱意に打たれた研究者は少なくない。温かい受け入れ態勢に感激し、老後を大樹で過ごしたいという研究者の声もある。
小林最先端技術を持つ研究者の来町など、地元の子供たちの教育分野への還元などもある。伏見町長は「大樹の子供は幸せだ」といっていた。
安田本別では「介護保険推進全国サミット」開催が町民の誇りとなり、官民の協力にはずみがついた。
清水清水ではピアニストや漫画家など、芸術高の講師が、講演などで町民にも還元されている。「町民が全員教育に携わる」意識も出ている。
小林地域住民に町民としての誇りを持たせられるかが、地域の協力体制を築くカギなのかもしれない。
植木キャンペーン第一部のキーワードだった「あるもの探し」を、この3町は危機の中で見いだした。そして今、地域住民が依存体質を抜け、自立しようとしている。
安田3つのポイントは今回も共通項だった。
松村ただ、十勝の場合はあくまでも“芽”。花開くには至っておらず、開花までさらにヤマが待っている。例えば大樹の夢はメーカー誘致。雇用拡大など、直接的に町の活力となる経済効果の創出が課題だ。
安田本別は福祉に厚い体制を継続するため、官民の一層の協力が求められる。
清水清水は、横山教育長という「個」が築いた体制を、いかに組織化し、浸透させられるかが問題。
植木十勝にはほかにも光る素材を持つ自治体がある。池田のワイン、上士幌の花粉ツアー。足寄のラワンブキ、十勝川のモール温泉なども生かし方次第で面白いのでは。
松村ただ、町村の枠を超えて十勝の地域力も高めていく必要も出ている。
小林十勝全体で自立し、地域間競争に勝ち残るには、帯広の力が不可欠。そこで次回は、十勝全体への影響力が大きい母都市・帯広を検証してみたい。
/本別□福祉/
1990年代初め、町国保病院の建て替えと、全国・全道平均を大きく上回る高齢化率の問題に直面した本別町。ニーズの高い福祉・医療施策を重点に町の将来像を描き、認知症高齢者ケアに代表される福祉の町づくりを、住民と一緒に進めた。「もの忘れ散歩のできるまちほんべつ」は全国的にも注目され、昨夏に開催した介護保険推進全国サミットで広く発信した。(安田義教)
/大樹□宇宙/
1985年に「宇宙基地」誘致でのまちづくりを打ち出し、美成地区に全長1キロの滑走路を持つ町多目的航空公園を建設。幾度の挫折にも熱意で人脈を広げ、「成層圏プラットフォーム」実験などを誘致。地元住民は研究者と連帯感を持つ。来年度にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の三陸大気球観測所が町に移転するなど、航空宇宙の実験場としての重要度は増している。(小林祐己、松村智裕)
/清水□教育/
町内複式校の統廃合を進める中、「少人数学級」実現に向けて国へ構造改革特区申請。2003年6月に清水小学校で1クラス20人以下の体制を築き、「教育のまち」として脚光を浴びた。一方で課題となった統廃合に伴う閉校校舎利活用には、札幌市の道芸術高等学院から通信制高校開設の打診を受け、再び特区申請。06年4月、旧熊牛小を本校に芸術高が開校した。(植木康則、清水生)
/ご意見待ってます/
十勝毎日新聞社の年間キャンペーン取材班では、読者のみなさまからの意見を募集しています。記事を読んだ感想や、次回展開予定の帯広市への提言など、何でも結構です。ぜひEメール(machi@kachimai.co.jp)でお寄せください。
/予告…第3部は「帯広市」を検証します/

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