気になるミュージシャン~人の気配
この連載で、ミュージシャンという肩書が最初に来る人を紹介するのは初めてになる。今回は奈良在住のバンド「LOSTAGE」でボーカルとベースを担当する五味岳久さんについて書き連ねる。
五味さんは奈良で「THROAT RECORDS」というレコード屋を営んでいる。お店をやりながら音楽を続けている人は過去にも紹介したことがあるが、レコード屋の人がバンドをやっているのではなく、バンドマンの五味さんがレコード屋をやっているのだ。「どっちでもええやん」と言って笑う彼を想像しながら、それでも僕の考えは変わらない。これがひっくり返らないことこそが、すごいことだと僕は思っている。
五味さんは暮らしの中で音楽を鳴らすことに重きを置いているのではないだろうか。突き詰めて言えば誰だってそうなのだが、なるべくつくられた世界ではなく、なるべくありのままで、自分の人生の中で音楽を続けている。それは音楽家にとってはとても豊かなことだし、僕もそうありたいと思っているので、何気ない会話の中でも共感する部分が多い。また、クリエーティブに対する考え方もしかり。
実はこの文章を書いている前日まで、一緒に5泊6日の九州ツアーをしていた。弾き語りのツアーだったので、より人間同士の付き合いになる。面白い人と旅をすると、本当に実りが多い。五味さんは新しく出合うモノに疑問を持ち、意味を考えながら過ごしているように見えた。それが自分自身の暮らしにつながり、そこから歌が生まれることさえも想像ができた。どんな歌だろうと妄想する。隣にいられることに喜びを感じた。
一緒に過ごす中で強く思ったこと。「あなたのことをもっと教えてください」と歌う『Let Me Know』をツアー最終日の長崎で歌った。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続け、V6への楽曲提供も話題となる。ニューアルバム『Like A Diary』が来年1月29日にリリースとなることが発表になったばかり。