学生フリーペーパーの文化つなぐ 大学生運営「アワード」創設2年目
学生フリーペーパーの向上と高揚の後押しを目指し、2023年に発足した「Student Freepaper Awards(以下、SFA)」は国内で唯一評価と表彰を行う団体として、大学生のみで運営されている。第2回となる「SFA2024」が先月都内で開催され、筆者は審査員として参加した。団体の発起人で現在は会社員の諸橋裕一郎さん(23)は、「学生フリーペーパーの文化が絶たれないよう、団体の活動を継続させてほしい」と切なる願いを後輩に託す。(ライター・高山かおり)
今回は29の応募
今回のアワードには全国から29の応募があり、道内からも2団体が出品。アワード終了後には各団体がブースを構え、つくり手の交流を促すフェアと打ち上げも開催された。審査基準に基づいた評価点による賞の授与と、5人の審査員によるすべての団体向けの個別講評も送られた。
SFA発起人の諸橋さんは立ち上げの経緯として、「フリーペーパーをつくる学生の交流の場がまったくなかった。販売目的ではないので制作して終わってしまい、読者の顔も見えなかった」と自身の経験を語る。同じサークルの後輩で、現在代表を務める早稲田大学3年の久米侑太さん(21)を誘い、23年に始動した。
活動にあたり、参考にしたイベントがあった。21年に活動を停止した「Student Freepaper Forum(以下、SFF)」だ。全国から100以上の団体、1000人以上が参加した一大イベントを運営し、「学生フリーペーパーを文化に」と掲げていた。SFFのOBから話を聞くなどし、その精神を引き継いだ上で独自性を出しながら進めることを決意した。
筆者が選んだ審査員特別賞の「WASEDA LINKS」vol.47(右)と個人的に活動を応援したいと思った「DIVE」vol.1。協賛金や大学からの補助で制作する団体がほとんどの中、後者はメンバーのバイト代で制作費を捻出。印刷費を抑えるために大学のコピー機で出力し製本、自分たちの手で雑誌をつくろうという気概が特に感じられた
課題は認知度
昨年の第1回は運営の立場で、今回はOBとして見守った諸橋さんはイベントを終え、「団体の垣根を越えて学生たちが話す姿を見て、立ち上げてよかったと思う。さまざまな方向から制作物に対して評価をもらうことで、大きな刺激も得られる」と話す。一方で、運営メンバーで関西大学4年の河井玲緒さん(21)は「来場人数や参加団体をもっと増やしたい。SFAの認知度の低さは課題点」と言う。
学生ならではの悩みとして、活動期間が短く代替わりが激しい点が挙げられる。現在の運営メンバーは5人のみ。久米さんは、「回数を重ねることでしか認知度も上げられない。続けるしかないと思っているが、どう引き継ぎをしていくかは模索中」と打ち明ける。就職のため来年度から団体を離れる河井さんは、「制作団体同士のつながりもまだまだ弱い。ここで出会った人が合作するなど、そんな未来も生まれてほしい」と話す。
スマホ世代に
現在の大学生は2000年代に生まれ、中学生の頃からスマートフォンを所持している人が多い世代。当然、筆者の子ども時代とは情報を得る手段が大きく異なり、雑誌を読んできた学生はほんの一部であることは想像にたやすい。若年層向け一般誌の休刊が10年代に入ってから顕著なのもその証左だ。会場で複数の大学生に雑誌遍歴を尋ねてみたが、「団体に入って雑誌を読むようになった」と答える学生が少なくなかった。
「Seel」に所属する立教大学の佐々木高寛さん(20)は、「高校時代に図書館だよりを制作した経験から、雑誌制作に興味を持った」と話す。子どもの頃から、本は読んでいたという学生も目立った。書店ではなく、コミュニティーをきっかけとした雑誌の出会い方の事例に多数触れ、少しヒントを得たように思う。雑誌に携わる者として、これからも雑誌と人との接点のつくり方を模索していきたい、と強く思った。