十勝生まれのおもちゃ「森の輪」にiFデザイン賞 シンプルな意匠に世界が注目
地元の木材を使って職人が手作業で作る赤ちゃんのおもちゃ「森の輪(わっこ)」が、世界三大デザイン賞の一つ「iFデザイン賞2023」のプロダクト部門に選ばれた。親しみやすいシンプルな意匠が世界的な評価を受け、森の輪プロジェクトの馬場拓也代表は「大変うれしいこと。受賞後は道外からの問い合わせもあり、影響力の大きさに驚いている」と話した。(細谷敦生)
同プロジェクトは2019年、当時帯広大谷短期大学専任講師の馬場拓也さん(現北海道教育大学旭川校講師)を代表に、十勝管内の有志が始めた。地域の新生児に直径8センチのドーナツ状木製おもちゃをプレゼントしている。現在は道内外23の自治体が参加。十勝管内では池田、浦幌、音更、上士幌、清水、大樹、広尾、幕別、中札内(24年度配布)が参加している。
これまでにも「ウッドデザイン賞2020」や「第15回キッズデザイン賞」(21年)を受賞して、その名が知られ、道内の多くの自治体が参加する取り組みとなった。道外にはまだ知名度が低かったため、「世界的な評価をもらえば興味関心を持ってもらえるのでは」(馬場代表)との思いからエントリーした。
iFデザイン賞は9つの分野で構成され、森の輪は花形と言われるプロダクト部門で受賞。積み木や木製の食器は乳児が主体的に親しむことが難しいが、乳児の手で持ちやすい形状で、洗練された意匠と機能性が評価された。馬場代表は「プロジェクトに取り組む各自治体や職人の思いが伝わった」とも感じている。
同プロジェクトには昨年度から道外初の千葉県香取市が加わり、現在も複数の自治体が参加を検討中。日月伸事務局長は「規模が大きくて実感が湧かないが世界の評価はうれしい」と喜ぶ。この評価は信頼度につながるとして「今後も一つ一つの自治体と信頼関係を築きたい」と話している。
今後に向けて馬場代表は「評価を受けた一方で、それを最大限生かし切れていないのが現状。国内だけではなく、世界中にこの取り組みが届くとうれしい。今後も自治体、企業、職人の皆さんと協力し、木に親しみ、自然を感じられる環境を提供したい」と語った。
<iFデザイン賞>
ドイツを拠点とする、デザイン振興の国際的な組織「インダストリー・フォーラム・デザイン・ハノーファー(iF)」が1953年から主催し、全世界の工業製品等を対象に優れたデザインを選定している。国内では今回、キヤノンのミラーレスカメラ「EOS R7」や札幌市内のホテル「ザロイヤルパークキャンバス札幌大通公園」なども受賞した。