元ALTが地域おこしへ転身 本別初の外国籍協力隊員が着任
【本別】カナダ出身のロビンソン・ウィリアム・エドワードさん(35)が14日、本別町として初めて外国籍の町地域おこし協力隊として着任した。帯広柏葉高校などでALT(外国語指導助手)として勤務した経験も生かし、高校と地域をつなぐ役割を期待されている。風土が故郷に似ている十勝を愛するウィリアムさんは、カナダの高校を卒業後に進路に悩み、5年間引きこもりのような生活を送った。「本別での生活はとても楽しみ。自分の経験を伝えられたら。気軽に声を掛けてください」と穏やかに笑う。(北雅貴)
「私は日本人以上にシャイで引っ込み思案」。アルバータ州出身のウィリアムさんは流ちょうな日本語で話す。高校を卒業後は「何をやりたいか分からず、ニートのような生活を送っていた」と振り返る。何をしようとしても頭によぎるのは自分が失敗する姿。恐怖からなかなか一歩を踏み出せなかった。
「引っ込み思案」 漢字出合い変化
模索し苦しかったときに偶然、漢字に出合う。面白い形だと興味を持ち、図書館から本を借りたりインターネットで調べたりして、2000個の漢字を暗記し書けるようになった。好きな文字は「鼈(すっぽん)」。漢字を入り口に日本文化に興味を持ち、「北の国から」などのドラマやアニメを見るようになった。
カナダでも上位の難関大学のアルバータ大に23歳で入学。日本語を専攻し勉強し、卒業後の2015年に来日した。ALT時代は帯広柏葉高を軸に十勝管内の多くの学校にも出向いた。「自分から声を掛けても何も悪いことは起こらないと分かった。怖くない」と、通勤中のバスの中でも生徒に話し掛けるようになっていた。19年には日本語能力試験で5区分ある最難関の「N1」に合格した。
故郷に似た風土 十勝に強い愛着
今年8月にALTとしての任期は終えたが、十勝への愛着は強かった。前任地が帯広柏葉高校だった本別高校の小林央教頭の紹介で町の協力隊員に応募。着任翌日の15日は早速、本別高校(松田素寛校長、生徒77人)で、総合的な探究の時間「とかち創生学」の2年生の成果発表会を見学した。
同校は20年に、学校運営協議会を設置し、保護者や地域住民と共に運営を行うコミュニティー・スクール(CS)を導入。ウィリアムさんはCS推進員として、授業で必要となる人材の調整や、特色ある学校づくりの企画などを担う。
試行錯誤の漢字を書きながら、「回り道をしたかもしれないが無駄ではなかったと思う。現実には悪いことはあまり起こらないので、若者が早く前に進めるように後押しできたら」と意気込んでいる。