かちスポeye「美帆と小平」
スピードスケートの短距離女王、小平奈緒が引退した。最後のレースは北京五輪の銀メダリスト、高木美帆も及ばない圧巻の滑りだった。高木はインスタグラムに「私にとって最大の起爆剤でした」と小平への思いをつづっている。
メッセージは「あの日から約12年、長かったような、あっという間だったような」と始まる。「あの日」が、いつなのかは高木の胸の内だが、12年前に高木はスーパー中学生としてバンクーバー五輪に出場している。この五輪で23歳の小平が唯一手にしたのが団体追い抜きの銀メダルだった。
銀のレースを現地で取材していた。控えの高木は食い入るように見詰めていた。一度も出番のなかった高木に、表彰式後に小平らがメダルをかけてあげたシーンは印象的だった。取材ゾーンで「次は自分の力で」と語ったのを覚えている。
偉大な先輩を追い、オールラウンドの強さを誇る世界女王となった。小平から高木へ、次の世代への「起爆剤」の役目は受け継がれている。(古川雄介)