ルポとかち「おびひろ動物園飼育員の1日に密着」
おびひろ動物園(柚原和敏園長)の夏季開園が29日に始まる。飼育員たちは動物の健康を日々管理すると同時に、来園者にいかに楽しんでもらい、動物の実態を知ってもらうかを模索している。同園の飼育員に密着した。(石川彩乃)
「考える」ガイド
3月5日。この日は休園期間中だが、飼育員のガイド付きで観察する「おびzoo探検隊」が行われた。飼育展示係の松尾太郎さん(38)はホッキョクグマのガイドを担当。参加者を普段は入れない獣舎の「裏側」に案内した。
アイラ(雌、11歳)に餌を与えながら「鼻のあたりの毛が薄い部分を見ると黒っぽい。見た目は白いが、地肌は真っ黒」と説明した。野生の姿も紹介しながら、環境問題についても投げ掛ける。動物園の動物は見た目のかわいさや格好良さが注目されがちだが、来園客が野生本来の姿を知り、動物を取り巻く環境などに興味を持つきっかけをつくりたいと考えている。「ホッキョクグマは絶滅危惧種。北極海に浮かぶ大きな氷の上でアザラシを捕って食べるが、地球温暖化が進んで氷が溶けると、狩りの場所がなくなり、餌が食べられなくなってしまいます」
午後3時ごろ、イベント参加者を見送ると、アミメキリンのメープル(雄、7歳)、ユルリ(雌、4歳)、チャップマンシマウマのリオ(雌、5歳)の元へ。獣舎の掃除に取りかかった。蹴られて大けがを負う危険もあり「常にキリンの姿を視界に入れながら作業をする」。別の職員と協力しながら、ふんなどの汚れを取り除く。同時にふんの形やにおいなどを確認し、健康に異常かないかをチェックする。普段の飼育では、キリンとシマウマの飼育作業に1日2時間近く割く。
手際よく、注意深く
次は動物たちの餌などを保管する作業場に向かい、アメリカビーバーとキタイイズナの餌を用意する。動物園勤務丸2年の松尾さんは手慣れた手つきで作業しながら、「当初は同僚の野菜を切るスピードに驚いた」と笑う。
アメリカビーバーの獣舎には柳の木くずがたくさん。ダブ(雌、9歳)と双子のモカ・コナ(いずれも雄、1歳)が、自ら作った寝床で身を寄せ合っていた。「枝葉をそのまま与えているだけだが、気付くといろいろな形になっている。3頭で協力して過ごしやすいすみかを作っているようだ」。
続いて、国内の動物園で唯一見られるキタイイズナ、雪月(雌)の元へ。キタイイズナは小さくて素早い動きが特徴だが、与えるえさは馬肉50グラムと大食漢。体の半分ほどの大きさの肉片は、次の日には無くなっているという。
飼育作業の最後は、この日担当する動物たちの様子をもう一度確認しに行く。「まずは倒れていないか。健康状態の確認はもちろん、大きな動物が脱走しないよう、戸締まりもしっかり確認」。午後5時近く、次の日のイベントの準備をし、園内の管理事務所に戻って飼育日誌をつけ、この日の勤務を終えた。
松尾さんは「野生下の動物は、常に餌を探さなければならないなど、飼育下とは違う。本来の動物の姿を知ると、飼育下での『なんで?』とつながってくることもある。それを来園者にも伝えられるよう、常に勉強中」と、飼育員としての思いを語った。