住民運営の図書室「大空文庫」3月に終了 蔵書3500冊以上、40年間の歴史に幕
帯広市大空町の住民有志が大空会館別館で運営する図書室「大空文庫」が3月27日、40年間の歴史に幕を閉じる。運営に当たる「大空文庫の会」(田島光子代表)の会員数が減り、文庫を週1回開放するための人繰りが難しくなってきたためだ。田島代表(75)は「体力や気力があるうちに閉めることを決めた。利用者や、関わってくれた全ての方に深く感謝したい」と話している。(深津慶太)
文庫開設以前の大空地区は、月1回・約30分間の移動図書館車「ナウマン号」でしか本を借りる機会がなかった。大空文庫は1980(昭和55)年5月、子どもたちの居場所づくりと読書を推奨する狙いで、大空小学校PTAが発案して大空会館に開設した。
図書館の本を会館で借りられるようになったが、市に要望した司書の配置は実現せず、約30人の母親がボランティアで運営を始めた。読み聞かせや人形劇など子どもたちを楽しませる活動にも力を入れ、20年ほど前は市内や他の町で公演したことも。現在は他の読み聞かせボランティアに協力する形で活動を続ける。
月1回入れ替える市図書館の蔵書2500冊と、住民が寄贈した本1000冊以上を貸し出す。毎週土曜(新型コロナウイルス感染拡大後は第1土曜を除く)の午後1時から3時間半、会員が交代で、利用する地域住民を出迎える。
近くに住む工藤澄江さん(76)は「子どもが小さい時にお世話になった。しばらく利用していなかったが、10年ほど前から再び通って推理小説などを借りている。(文庫終了は)寂しくなるね」と話した。
発足当時から運営を支えてきた会員が多く、年齢は70代後半が中心。かつては30人いた会員も10人になった。40年間、運営に携わった田村尚子さん(78)は、子どもたちが送ってくれた似顔絵や手紙を大切に保存している。「少子化で、最近は高齢の利用者も多くなったが、にぎやかな場所だった。ここまで続けてこられて幸せ」と笑みを浮かべた。
貸し出しは3月13日まで続ける。3月20日と最終日の同27日は閲覧と返却のみ可能。文庫閉鎖後について、市図書館は毎週第2火曜に大空町内の2カ所を巡るナウマン号や、帯広の森コミセン図書室の利用を呼び掛けている。