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特定技能1号で台湾から就労 新得 関谷牧場

「責任のある仕事を任せてもらいやりがいを感じる」と話すソンさん

 【新得】町屈足トムラウシの関谷牧場(関谷達司社長)で昨年12月から、台湾人のウー・ソンカイ(愛称ソン)さん(34)が「特定技能1号」の在留資格で働き始めた。もともと、ワーキングホリデー(WH)制度を使って同牧場で働いていたソンさんは、大好きなトムラウシで再び働けることに心躍らせる。ただ、在留期間終了後を思うと手放しで喜べない事情も。

 ソンさんは台湾の首都・台北近郊の新北市出身。大学で機械工学を学び、1年の徴兵を終えた後、スキルアップのため日本語を学び始めた。現地の日系企業に勤めたが、30歳になるタイミングで「いつか海外で働いてみたい」という夢を追い、WHに応募。それまで農業に携わったことはなかったが、仕事にゆとりがあって、日本人と話す時間が取れそうとの理由で同牧場を選んだ。

 2016年10月から1年間の同牧場での生活は、「いろいろなことが新鮮で、価値観が変わった」という。米国での研修経験もある関谷社長の視野の広さやオープンな人柄に引かれ、関谷家で振る舞われる日本の家庭料理も心に残った。何よりも、地域総出でのイベントや学校行事が楽しかったという。

 帰国後は家業の運送業を手伝っていたが、トムラウシでの暮らしが忘れられず、昨年1月から短期滞在ビザで来日。同牧場を手伝いながら1号資格の勉強を重ね、3月に札幌で行われた試験に挑戦した。もともと、日本語能力試験で上から2番目のN2レベルの語学力はあったが、肉牛だけでなく乳牛、豚、鶏など幅広く問われる畜産の問題も満点近い出来で合格を果たした。ベトナムや中国などの技能実習生からの移行が大半の1号資格を、台湾人が取得するのは極めてまれ。

 WH時代は子牛の餌やりが主な仕事だったが、今は出荷前の牛の管理など責任の重い仕事も任されている。また、WHで働く別の台湾人スタッフのサポートも。スタッフ9人の同牧場で「とても貴重な戦力になっている」(関谷社長)。ソンさんは「まだまだ勉強しなければならないことが多い。早く牧場の力になりたい」と意気込む。

 1号資格の在留期間は最長5年で、終了する頃には40歳が目前のソンさん。長男として家業を継がなければという思いと、トムラウシに残りたいという思いで揺れている。「一度きりの人生なので、悔いのない選択をしたい」と話す。

 ただ、その選択のネックとなりかねないのが日本の在留資格。現状、農業は在留期間を更新できる2号資格の対象業種ではないため、日本に滞在し続ける道は限られる。「日本での経験を評価して就労ビザを出してもらえる制度ができれば」と願っている。(丹羽恭太)

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