コロナ禍ものれん守って そば処・丸福が創業100年
帯広市内の「そば処・丸福」(東1南10、千葉隆一店主)が今年、創業100周年を迎えた。「冷やしかしわ」発祥の店と言われ、政財界から観光客まで多くの人をうならせてきた老舗。コロナ禍の厳しい環境下での営業を強いられる中、節目を記念して14日、常連客らがのれんを贈った。4代目の隆一さん(47)は「店を守ることが皆さんへの一番の恩返し」と思いを新たにしている。
隆一さんの父で3代目の隆雄さん(74)や当時の資料によると、丸福は1920(大正9)年、東京出身でとび職人だった吉川庄太郎氏(故人)が西1南8に「更科そば」を開業。吉川氏の妻千葉みよのさん(同)のいとこで養子となった千葉惣助氏(同)が2代目となり、35年には現店名となった。40年に現在地に落ち着いた。
戦後、業績は一気に伸びて帯広の名士らがこぞって通い、「丸福ロータリー」と呼ばれる常連会ができて社交場に。力士に憧れた惣助氏にちなみ、「常連番付」もでき、横綱客は正月も通うほどだった。87年に現店舗を新築。一時、広小路に支店を出した。
丸福は一貫して二八そばで、つゆに使うかつお節は店内で削る。惣助氏が昭和30年代に考案したとされる冷やしかしわ(850円)などが看板メニュー。民間勤務を経て29歳で入店、2015年から店主になった隆一さんは「祖父が父に言い続けた『昨日と同じ味を出せ』を胸に立ち続けている。プレッシャーもあるが、正直に続けていくだけ」と語る。
節目の今年だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響などで2月から昼時間のみの営業が続き、5月から数カ月間の売り上げは前年の約6割減と苦戦。隆一さんは「100年の記念に何かと、考えていた矢先だった。常連さんのおかげもあり、8月以降徐々に盛り返しているが、夜の分までは戻せない」と唇をかむ。
14日には常連客でつくる「丸福たまり会」(曽我彰夫会長、32人)の役員9人が訪れ、店先に掲げるのれんを贈った。同会は創業80年と同90年にものれんを贈っており、曽我会長(73)=曽我会長=は「地域の宝。コロナに負けず、今後110年、120年とのれんをつないでほしい」。40年以上の常連で、12年前からは平日ほぼ毎日通う中寺征雄副会長(78)=アサヒ電気顧問=も「学生や観光客、有名人まで愛してやまない味。応援し続ける」と笑顔を見せた。
店は10月、国の補助を活用して高機能換気システムを導入したほか、トイレも改修した。隆一さんは「常連の皆さんの思いには大変感謝。まずはのれんを守ることを第一に考えたい」と話している。(佐藤いづみ)
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