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営業半世紀、理容店「カロ」が閉店 火災で店舗焼失

更地になった「カロ」跡地に立つ林さん夫妻。「こうして見ると、意外に狭いな」と和弘さんは苦笑する

 半世紀の歴史を持ち、十勝の理容店では初めてカットなどの分割料金を導入した「メンズ・カット カロ」(帯広市大通南13)は6日までに営業再開を断念し、閉店した。店舗は2月、帯広市職員のガスバーナーを使った作業が原因の火災で焼失していた。経営者の林和弘さん(72)は「お客さんに助けられ、続けることができた。こんな形でお別れするとは思いもよらなかった。お客さんに会ってあいさつできないのがつらく、心残り」と複雑な思いを話す。

 同店が入居していた雑居ビルは、市上下水道部職員が水道管漏水補修のためガスバーナーで解氷作業を行ったところ、壁の柱に引火し、内部を全焼した。

 1967年、市内西1南12で開業したカロは、林さんの名前から付けられたニックネームを店名にした。99年に大通南13に移転。帯広駅に近く、地元住民のほか、出張で訪れたビジネスマンにも常連がいた。

 同店は約30年前に、カット1000円を目玉とした分割料金を開始。それまで3000円程度だった一括サービスを、洗髪や顔そりは各600円などにして分割した。店内改装に合わせて差別化を図ろうと、東京で広がりつつあった料金体系の導入だった。

 「本当に1000円なの?」と半信半疑だった客も技術の高さや利便性を認め、来店者は数倍に増加。客の8割はカットのみだったが、来店頻度は高まり、1週間に1度、訪れる人もいた。高校生も多く、「親に一般的な料金の3000円をもらい、差額は懐に入れていたようだ」と林さんは苦笑する。

 妻の洋子さん(67)と店を切り盛りし、客は散髪後もコーヒーを飲みながら会話を楽しんだ。洋子さんは「山菜や魚などをもらうことも多かった。お客さんとのやりとり一つひとつが思い出」と笑顔で話す。

帯広市大通南13に移転した直後の「カロ」。当時の分割料金「カット1500円」の看板が目を引く(1999年)

 林さんは数年前から引退時期を探り、同店で働く30代の男性理容師が店を引き継ぐことになっていた。ただ、火災で計画は変更を余儀なくされた。現在地での再開を最優先に考えたが、土地所有者の都合もあり断念。道具一式をそろえる必要があり、立地条件の良い駅周辺で店舗を探し「市職員も協力してくれた」(林さん)が、条件に合う物件は見つからなかった。

 常連から再開時期の問い合わせが相次ぐ中、断腸の思いで閉店を決断した。林さんは「お客さんのために再開したかったが、気持ちを整理した。長い間、ありがとうございましたと伝えたい」と感謝を口にしている。(池谷智仁)

 

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