「障害者差別解消法」施行に向け、管内自治体対応急ピッチ
自治体などの行政機関や企業などが障害の有無を理由にした差別を行うことを禁止し、障害を持つ人への合理的な配慮を義務付ける「障害者差別解消法」が4月に施行される。施行を前に管内各自治体では職員対応要領の策定などへの対応を急ピッチで進めている。
障害者差別解消法施行後は「車いすを理由に入店を拒否する」、障害があることを理由に「スポーツクラブに入れない」「アパートを貸してもらえない」などの障害を理由とした行政機関などや事業者による「不当な差別的取扱い」が禁止される(同法第7条、第8条)。
また、「災害時の避難所で、聴覚障害者がいることを管理者に伝えたのに、音声による情報提供しか行わない」など、障害者から社会的障壁の除去を必要としていると意思表明があり、その実施の負担が過重でないときは「合理的な配慮」をすることが行政機関などは義務、事業者は努力義務とされる(同)
事業者(企業など)がこの法律に違反した場合、その事業を担当している大臣が報告を求めたり、行政指導を行ったりする。虚偽報告や報告を怠ると罰金(20万円以下の科料)が課せられる。
十勝毎日新聞社が管内19市町村に聞き取りを行ったところ、すでに職員の対応要領を策定しているのは帯広市のみ。帯広市の職員対応要領では窓口で「障害を理由に後回しにする」などといった不当な差別的取り扱いの事例を挙げるとともに、合理的な配慮の例として「視覚障害者へ資料を事前送付する際は、テキスト読み上げソフトに対応できるよう電子データで送付する」などの対応を示している。
また、道による要領が具体的事例に踏み込んでいるため「当面は道の要領を職員に周知する形で運用する予定」(浦幌町)など、道の要領を活用する予定の自治体も多い。
同法17条で組織することができるとしている「障害者差別解消支援地域協議会」については、帯広市は「新年度早期中の設置を目指して検討していく」とする。管内の町村は、想定される協議会のメンバーが、すでに施行されている障害者自立支援法に基づいて設置されている「地域自立支援協議会」の構成員と重なるため、「自立支援協議会の規約を変更して対応する」(音更町)などと、ほぼ全ての自治体が既存組織を活用する方針だ。
独自の取り組みを進めるのが2014年度に全国の町村で初めて手話条例を制定した新得町。管内で唯一、自治体独自の条例である「町障がい者条例」を制定し、障害者差別解消法と合わせた4月1日に施行される。同町では地域協議会について、障がい者条例に基づいて設置し、差別や暮らしにくさを解消するために障害者から意見を吸い上げる「暮らしづらさ解消委員会」がその役割を担う。また、職員の対応要領についても、国や道による対応要領を踏まえた上で「聴覚障害者が多いという町内の特性を踏まえて、独自の要領を策定する」としている。(大谷健人)