設立50周年 CD制作 帯広カムイトウウポポ保存会の酒井会長
帯広カムイトウウポポ保存会(酒井奈々子会長、49人)が今年創立50周年を迎える。半世紀の節目を記念して、十勝で歌い継がれてきたウポポを収録したCDを制作する。全24曲を1人で歌う酒井会長(62)は「ばば(先人の十勝アイヌの女性)たちから受け継いできた十勝のウポポ(歌)を若い者たちにきちんと残したい」と話している。
同保存会の前身の十勝アイヌウポポ愛好会は、歌や踊りの伝承者だった吉根リツさんや広野ハルさん(いずれも故人)らに「ウポポやリムセ(踊り)を守ってほしい」と頼まれた加藤ナミエさん(故人)が呼び掛け、酒井さんの母荒田マツエさん、佐々木トメさん、安東ウメ子さん、伏根ヤヨさん、三浦ノブさんらで1955年頃に設立。64年に同保存会に改名した。
歌と踊りの継承に力を注ぎ続け、2004年には初の九州公演、07年には国立劇場で文化庁主催の国際民俗芸能フェスティバルに出演するなど、近年は大小合わせて道内外で年間30公演を行う。
71年に市文化奨励賞、82年に市指定文化財第3号指定、84年に国の重要無形民俗文化財指定を受けた。08年に道文化財保護功労賞、09年に十勝文化賞を受賞。同年にはアイヌ古式舞踊が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された。
50周年の節目に、楽譜もなく、母から娘へと自然と歌い継がれてきたウポポを「元気なうちに歌っておきたい」(酒井会長)とCD制作を決めた。財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌)の助成を受け、300枚を制作する予定。
曲目は「シッチョチョイチョイナ」(豊年踊り)「サランペ」(和人から絹をもらい喜びを表す踊り)など24曲を選定。母マツエさんが自分の心境などを即興で表現した「ヤイサマ」や、十勝の歌ではないが、酒井会長が好きな「コンカネルイカ」(金の橋銀の橋)も収録する。
同機構の高田将寛総務課係長は「後世に残していけるいいものができるのでは」と期待する。歌の収録は帯広市内のとかちプラザで今月から始め、11月に予定する記念式典で出席者に配布する他、教育機関などにも寄贈する。(澤村真理子)
◆帯広カムイトウウポポ保存会について
・帯広カムイトウウポポ保存会-帯広百年記念館 アイヌ民族文化情報センター「リウカ」ホームページ
・帯広カムイトウウポポ保存会過去の活動-十勝毎日新聞電子版