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とかち特報部「消費増税 +3%転嫁?据え置き? 商店、決断の時」

「値上げ」を決めた店もある中、消費税分を転嫁せず価格維持を決めた高橋まんじゅう屋。それぞれが苦渋の決断で4月以降の料金・価格を決めている(金野和彦撮影)

努力限界 けれど 客離れ不安
 4月1日の消費増税を前に、地元の中小商店、飲食店が、料金・価格の値上げか、維持か-という岐路に立っている。3%から5%になった1997年以来、17年ぶりの税率改定だが、その間、原料高など商売を取り巻く環境は厳しさを増し、景気回復傾向の実感が薄く、増税による客離れを不安視する店主も多い。「転嫁やむなし」「苦しいが現状維持を」-。プラス3%に対する各店の“決断”を追った。

 「企業努力で値上げしなかったが、限界にきた」

 帯広市内で10店舗を経営する前川クリーニングの前川博秋社長(53)は話す。同社は今月中旬、8年ぶりに価格改定し、各種料金を5~10%値上げした。ボイラーに使う重油をはじめ、石油製品のハンガーや仕上がり品を入れる袋は価格が上がり、経営を圧迫していた。同業者でつくる道クリーニング生活衛生同業組合帯広支部の支部長も務める前川社長は、「昨春ごろから値上げする店が増えている」と苦しい業界事情を明かす。

原料高も直撃 サービス維持
 だが、早くも影響を感じている。衣替え需要で3月後半~4月は年間最大の書き入れ時だが、増税と重なった今年は「出足が鈍い」。洗濯機や洗剤の進化に伴い洗濯を自宅で済ませ、節約で業者に出す回数を減らすなど「クリーニング離れ」も懸念する。「サービスを低下させないために、適正価格を維持することが、業界にも消費者のためにもなる」と自分に言い聞かせるように語る。

 「段階的に転嫁する」という店も。文房具や雑貨、衣類などを扱うコハタ(帯広市西20南3、宇佐美英樹社長)は、10日ごろから順次5%から8%課税とする。扱う商品が鉛筆1本からと膨大で、値札の張り替えが間に合わず、客が多い入進学時期とも重なった。その間の増税転嫁分は自社負担とするが、想定額は20万~30万円と少なくはない。宇佐美社長は「値段付け替えのために人を雇えないし、しょうがない」と淡々と語る。

長い付き合い「飲み込むよ」
 「価格据え置き」を決めた店もある。今年創業60年を迎えた高橋まんじゅう屋(市東1南5、高橋道明代表)は、大判焼き100円など全商品値上げしない。ソフトクリーム(150円)の価格は15年以上同じ。高橋代表は「お小遣いで買う子供や高校生のお客さんが多いし、家族経営だから我慢できる」と話す。

 以前は10個、20個と区切りのいい個数が売れたが、「今は6、7個など半端な数でも必要な分だけ買う傾向」とシビアな消費者事情を感じている。一方、材料の小麦粉、チーズなどの値段、光熱費はここ数年上がり続けている。「サイズを小さくするわけにもいかないし。ロスを減らすなど、今まで以上に無駄を見直したい」と前を向く。

 「景気回復の実感がない中、長年付き合いがあるお客さんに『消費税分を』とは言えない。(自分の)生活を我慢しても(増税分は)飲み込むよ」。理容としま(市東9南5)の戸島久義店主(75)は笑う。創業53年目、前回の増税時も価格は据え置いた。4月以降も、通常料金3300円、特殊技術3500円を維持する。

 妻の朝代さん(73)、長男義則さん(41)、義則さんの妻の舞さん(35)の家族で切り盛りする。「来店の間隔を延ばす人が出る」と値上げでの客数減も気になる。一方、ディスカウント店の台頭や少子化で顧客の世代交代が進まず、売り上げはピークより4割近く落ちた。「扱うのが商品ではなく技術料なので打撃は大きくない。お客さんの顔を多く見たいからね」

 高橋さん、戸島さんが気にするのは、2年後の「消費税率10%」だ。「そのタイミングで値上げを決断することはある」(高橋さん)、「10%が現実となれば、考えなければならない」。景気回復を実感せず、先行き不透明感を拭えないまま、間もなく、それぞれの「増税初日」を迎える。(原山知寿子、澤村真理子)

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