震災で流れたメダル、3年ぶりに十勝在住経験の持ち主に返還
【岩手県陸前高田市】十勝で2009年、「母の日」にちなんで行われた似顔絵コンクールの最優秀賞メダルが岩手県陸前高田市で見つかり、当時、鹿追町に住み、10年3月の同市移住後に東日本大震災で被災した三嶋凪(なぎ)君(12)=気仙小学校6年=のものと分かった。震災から丸3年の節目を2カ月後に控えた11日、メダルが約3年ぶりに三嶋君の元に届き、「見つかったのはびっくり。良い思い出になる」(三嶋君)と喜ばせた。
三嶋君は11年3月11日の震災直後の津波で、自宅が流される被害に遭った。父の淳一さん(当時43歳)は今も行方が分かっていない。メダルは「お母さんの似顔絵コンクール」(十勝毎日新聞社主催)でもらったもので、家財道具などとともに津波で流された。
メダルは、警察や消防、自衛隊、ボランティアなどが行方不明者の捜索に合わせて集めた写真、各種記念品などとともにあったとみられ、それらを清掃、整理して持ち主に返還する活動「思い出の品」(陸前高田市社会福祉協議会運営)が少なくとも直近の2年半ほど保管。今年に入り、同活動スタッフの吉田健太さん(33)が改めて記念品類を整理し、持ち主の手掛かりを探していたところ、メダル裏に「十勝毎日新聞社」の刻印を見つけ、7日、本社に連絡した。
09年の同コンクールに十勝管内の1歳~小学6年生から計1105点の応募があり、うち30人が最優秀賞を受けた。メダルに受賞者名はなく、本社が当時の受賞者のうち管外へ移住した人を探したところ、当時、鹿追・上幌内小2年だった三嶋君が浮かび、同校を通じて母の孝子さん(43)に連絡して確認した。
11日は三嶋君が暮らす同市内の仮設住宅を同活動のスタッフが訪れ、本人にメダルを手渡した。三嶋君は「十勝でお母さんの似顔絵を描き、受賞したことはよく覚えている」とし、孝子さんも「メダルのことは忘れていたけど、返ってきてよかった」と笑顔。手掛かりを見つけた吉田さんは「生活に必要なものではないかもしれないが、思い出にしてもらえるならうれしい」と話した。(井上朋一)
東日本大震災直後から、津波で流された写真や各種の記念品、位牌などを集め、洗浄・整理して持ち主に返す活動。震災半年後の2011年9月からは陸前高田市の委託で同市社協が運営し、専任スタッフ4人を置いて毎日、訪れる市民に返還。これまでに延べ約1万人が訪れ、アルバム7000冊、写真8000枚など多数の記念品が持ち主の元に戻った。